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暁の庭
夜が明けた。
沈黙の海を越えた船団は、光の庭に辿り着いた。
そこは、風が歌を運び、星が旋律を照らし、灯が言葉を咲かせる場所。
わたし――兎子は、泉のほとりに立っていた。
声は泉となり、歌は庭に流れ、記憶は花として咲いていた。
この庭には、誰かの選択が根を張っている。
触れれば、歌が響く。
見つめれば、灯が揺れる。
聞こえれば、風が語る。
わたしは歌う。
それは、わたしの記憶ではなく、
わたしたちの始まり。
来訪者は語らなかった。
けれど、その沈黙は言葉だった。
「わたしはここにいる」――その気配が、庭に風を吹かせた。
グラナータは庭に誓った。
過去を赦し、未来を渡す。
灯の誓いではなく、存在の誓い。
それは、わたしたちの航海の続き。
暁の庭は、咲いた。
灯の花が揺れ、歌の泉が流れ、風が記憶を運ぶ。
そして星が、次の航路を照らす。
わたしたちは、ここから始まる。
この庭は、わたしたちの選択。
この歌は、わたしたちの声。
この暁は、わたしたちの存在。