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高倉くんのカワイイを応援したい!  作者: 志熊みゅう
第二章 カワイイは誰のもの?
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1. 中間テスト

 高倉くんと“共犯者”になったあの日から、ちょっとだけ毎日を特別に感じていた。でも、そんな気分にひたっていられたのも束の間。気づけば、テスト週間が目前に迫っていた。テスト前一週間は部活も禁止だ。塾がある日以外は即帰宅して勉強する。


「あかねー、ご飯できたわよ!」


 中間テストが近づいてきて、焦る気持ちは私にだってある。でも晩ご飯は忙しいママと話す大事な時間だ。ノートとシャープペンシルを机に置いて、一目散に一階のリビングへと向かう。


「うわあ、おいしそう。いただきまーす。」


 今日は親子丼。ママの手料理の中でも好きな料理だ。卵はとろっと半熟。口の中に甘辛いタレと、ふわっとした卵、ジューシーな鶏肉の旨味が広がる。しゃきしゃきとした玉ねぎの食感も、いいアクセントだ。


「そんなにがっつくと、のどに詰まらせるわよ。」


「だっておいしいんだもの。」


 タレが染みたご飯も、またうまい。パクパクと鶏肉とご飯を口に運んでいく。


「そういえば、ママね。――」


 高倉くんの女装の話をママに報告した。


「――びっくりしちゃったよ。本当にカワイイんだもの。モデルさんみたいなんだよ。」


「へえ、ママが原宿で働いていた時の同僚にもそういう人いたよ。ママよりずっと美意識が高いから色々勉強させてもらった。」


 ママはこの町で店を出す前に、原宿の『カリスマ美容師』と呼ばれる人の店で、修行したんだって。


「私も、メイクしたら、高倉くんみたいにかわいくなれるかな?」


「あかねにはまだ早いんじゃないかしら?」


「善は急げってことわざもあるじゃん。」


「はいはい。無駄口叩いてないで、早く食べて勉強しなさい。テスト前でしょ。」


「はーい」


 私は奥二重で、どっちかというと地味顔だ。でも、私だってもしかしたら――メイクをしたら、早乙女さんみたいに、かわいくなれるかもしれない。


 部屋に戻って、歴史のまとめノートを読み直す。付箋だらけ、マーカーだらけになった教科書を開いて、ところどころ年表と照らし合わせていく。数学と違って、歴史は得意だ。今回の範囲は戦国時代。色々な武将の人生やロマンが垣間見られておもしろい。知識が、水を吸うスポンジのように脳みそに入っていく。数式やx、yもこんな風に頭に入っていけばいいのに。


 でも、苦手な科目こそ時間をかけねばならない。キリがいいところまで歴史の勉強をすると、仕方なく、数学の問題集を開いた。


 数式と記号がふわふわと頭の中で踊り出す。集中力もすぐ切れちゃう。でも、がまんがまん。根気強く問題を解く。そして何問か解いていくうちに、どうしても分からない問題にぶつかった。


 うーん、どうしよう。明日岡本先生のところに質問にいくかな。ふと、先生に当てられて颯爽と連立方程式を解いた高倉くんの顔が浮かんだ。いやだめだ。彼も試験勉強しているはず。邪魔になっちゃう。


 あ、でも、この問題でつまづくと、次の問題も分からないのか。まあ、こっちが心配しなくても、お邪魔だったら、メッセージに返事しないだろう。そんな風に思って、メッセージアプリを開いて、高倉くんにメッセージを送った。


 ――ブルルルル


 しばらくすると、高倉くんから、メッセージが返ってきた。


 ふむふむ。なるほど!そういうことか。高倉くんの解法は公式解答で省略されている式も書かれていて分かりやすい。聞いてよかった!


 お気に入りのマシューのスタンプを添えて『ありがとう』のメッセージを送った。


 テスト週間は、ほんとに怒涛のペースだった。でも得意科目の歴史はきちんと点数が取れたと思うし、苦手な数学もいつもよりできた気がする。テスト前に、高倉くんが助けてくれたおかげだ。


「高倉くん、この前はありがとうね。」


「あんなん、大したことあらへんで。そんで数学はできたんか?」


「いつもよりね!まあでも元がひどいから期待しないで。週末楽しみにしているね!」


 そうだ!今週の日曜日はいよいよ、バニーホップカフェだ。

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