6. 私のアンサー
劇場を出て渋谷駅へ向かう道筋、意を決して高倉くんを呼び止めた。
「高倉くん、ちょっといい?私、この前のお返事しようと思って。」
高倉くんが目を大きく見開いた。そのまま、近くの公園に移動した。
「――私気づいたの。高倉くんのことが大好きだって。これが恋だって。」
「あかね……」
「高倉くんとは何を話しても楽しいし、高倉くんがお笑いの話していると気になってあとでその芸人さん動画投稿サイトで検索しちゃうし、高倉くんのSNSが更新されると通知される設定にしているし、カワイイ格好している高倉くんのことは本当見惚れちゃうし、授業中難しい問題当てられてさくっと答える高倉くんはひたすらかっこいいし、高倉くんがA組の女の子と話しているとすごく胸がざわつくし……気づけばね、朝も、昼も、夜寝る前も、私一日中高倉くんのこと考えてた。――やっと……やっと私これが"恋"だって気づいたの。」
そこまで言い切ると、高倉くんが優しく抱き寄せてくれた。
「――あかね、俺も大好きやで。」
そっと耳元でそうささやかれて、次の瞬間、唇と唇が重なった。初めてのキッスはレモンの味……じゃなくて、高倉くんのルージュがふわっと甘く香った。街灯の下、甘い香りに包まれながら、しばらくお互いの熱を感じて抱き合っていた。
「……このまま一緒におりたいけど、あんまり遅うなったらアカンし、そろそろ帰ろか?」
「そうだね。高倉くん。」
「なあ、あかね。付き合い始めるんやしさ……その呼び方、そろそろ変えてくれへん?」
「え!?」
「――俺の名前は"律"や。律って呼んでくれや。」
「……じゃあ、律。帰ろっか。」
「ちょ、待って、その言い方めっちゃええやん。」
高倉くんの顔が耳まで赤くなって口元を手で覆った。なにその表情!?反則級にカワイイ。
私たちは再び駅に向かって、手をつないで歩き出した。大好きな高倉くんと踏み出す新しい一歩に胸が跳ねた。帰りの電車では次のデートの相談をした。新しくできた商業施設にも行ってみたいし、有名なテーマパークにも行ってみたい。だって、高倉くんと一緒だったら、きっとどこだって、なんだって楽しい。
「そういえば、ハロウィーンは双子コーデしようね!」
「何がええかな?魔女?メイド服?」
「マジプリがいい!マジカル☆プリンセスナイツ!律も好きだって、お姉さんから聞いたよ。私、プリンセス・ルミナの格好、前からしてみたかったの。」
「あかねもマジプリ好きなんや!めっちゃかわええよな~!ほな、うちはプリンセス・アテナにするわ!」
「まって、それ絶対かわいい!律のアテナ、見たい!」
高倉くんと次のデートやハロウィーンのことを話していたら、電車の窓から見える東京の街が、いつもよりずっときらきらして見えた。
思えば、高倉くんと出会って、私はたくさんの『好き』に気づくことができた。写真、お笑い、SNS……そして高倉くん!――これからも私は、私の『好き』を大事にしていく。そして――高倉くんの“カワイイ”も、ずっと、ずっと応援していきたい。そう誰かに決められたものじゃない、高倉くんだけの"カワイイ"を。
――だって、"カワイイ"は私たちのものだから!
こちらで最終話になります!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
この作品は、もともとアルファポリスの児童書大賞向けに執筆したもので、ジェンダーやルッキズムといったテーマを、子どもたちにも分かりやすく、自分ごととして考えてもらえるよう書きました。
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志熊みゅう




