7. 写真部の楠くん
夏祭りを前に、わくわくする気持ちが高まっていく一方で、少しずつ夏休みも終わりに向かっている。今日は珍しく部活で学校に来ている。我々写真部は運動部と違うから、夏休みの間、ほとんど活動しない。でも夏休み明けすぐの文化祭に向けて、多少は準備しないといけない。だから久しぶりに部室に集まった。なお、賞レースガチ勢の渡邊先輩は文化祭を最後に部活を引退する予定だ。
「部屋は家庭科の実習室を使わせてもらうことになった。各々パネルに自分の作品を飾っていく形でいいか?」
「はい」
その時、次期部長と目されている楠くんが遅れて部室に入ってきた。クラスの出し物の練習があるから、少し遅れるって言ってたっけ。
「楠、遅い。それで、頼んでいたブース当番の割り振りはどうなっている?」
「これでいいですかね?」
そういって、楠くんは一冊のノートを取り出して、見せた。
楠くんは、私たちと同じ二年生。クラスはとなりのA組だ。鉄道オタクでいわゆる撮り鉄。よく珍しい電車の写真を撮りに遠征している。でも意外や意外。人物写真を撮るのは彼が一番うまい。本物のプロのカメラマンみたいに、モデルにうまく声をかけながら、緊張をほぐしていく。
「楠くんは、やっぱり今年も鉄道の写真を飾るの?」
「うん!この前、珍しい寝台特急が撮れたからね。あと人物写真も。村岡さんにも許可をとらないと。」
村岡さん――あ、紬のことか。いつも下の名前で呼んでるから、名字で言われると一瞬分からなくなる。
「私は食べ物をテーマにしようかな?この前、北海道に行った時、パパとたくさんおいしいお店に行ったんだ。」
「いいね、いいね。自由展示だけど、テーマはできる限り、ばらついた方がいいから。」
そういって、楠くんがノートにメモを取った。高倉くんが横で頭をひねっている。
「ほな、うちは原宿テーマにしよっかな。この前撮ったやつ以外にも、お気に入りあるしな~。」
「分かった。そういえば渡邊先輩は、コンクールで佳作を撮った写真を中心に飾るらしいよ。」
楠くんがさっとノートに書き込みながら言う。ああ、あの写真か。蝶がさなぎから羽化する瞬間をとらえたやつ。一枚を撮るのに5時間もかかったって聞いた。その話を聞いて、さすが、賞レースガチ勢って震えたっけ。
写真って、同じものを撮っても、撮る人によってまったく違う表情になる。それを見比べるのも、すごくおもしろい。テーマが自由っていうのも、なんだかうちの部活らしくて、ちょっと好きだ。
各自が好きなものを思い思いに写した写真展――みんなちがって、みんなよくて、なんだかとっても楽しみだ。




