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高倉くんのカワイイを応援したい!  作者: 志熊みゅう
第三章 高倉くんの『好き』

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2. 更新が途絶えたSNS

 次の日、部活動からの帰り道、高倉くんに恐る恐る聞いてみた。


「あのさ……高倉くんって、やっぱり男の子が好きだったりするの?」


「――やっぱりって何?」


 あ、怒っている。まずい。聞かれたくないこと聞いちゃったのかな。


「俺、心は男やし。好きになるんも女の子やっちゅうねん。まあ、ああいう格好しとったらよう聞かれんねんけどな。見た目で勝手に決められて、ほんま疲れるねん。」


 いらだつ声に紛れて、高倉くんの表情が少し曇った気がした。私は、美意識が高くて女の子の格好をするのが好きな高倉くんのことを無意識に『心は女の子』で『男の子が好き』なのかもって、思っていた。


 性の多様性の考えは広まってきたけど、まだ理解が十分ではない中、高倉くんみたいな、多くの人が思い描く男性、女性、LGBTQ+のイメージにぴったり当てはまらない人は、かえって誤解されやすいのかもしれない。


「変なこと聞いてごめん。決めつけたみたいで良くなかったね。でも私は、男子の制服の高倉くんも、女の子の格好をしている高倉くんも好きだよ、親友として。」


「……親友。」


 少しショックを受けたような高倉くんの表情に一瞬、胸がちくりと痛んだ。ごまかすように、少し笑って言った。


「うん、大親友!」


 性別に限らず、『分類』って誰かのことを最初に判断するときに、とても便利だ。


 ――男の子だったら、かっこいいものが好きで、女の子が好き


 ――女の子だったら、かわいいものが好きで、男の子が好き


 そんなふうに、最初から『こういう人』って決めてしまえるから。


 でも性のあり方のように、グラデーションがあるものを無理に分類しようとすると、どうしても区切りが難しい。だから今まであった男と女っていうふたつの枠に、うまくはまらない人たちがいて、そこから『性の多様性』という考えも広まった。


 でも今度は逆に『LGBTQ+』に属する人たちのイメージが、トランスジェンダーの人はこう、ゲイの人はこう、と決まった形になって、社会で一人歩きしているような気もした。例えば、LGBTQ+と呼ばれる人たちには、本当はいろんな人がいるはずなのに、いつも同じような人ばかりがテレビやネットで紹介される。最後の『+』に表されるように、現実の性のあり方はもっと多彩なはずだ。


 こうしたラベル貼りは、なにも性別に限った話ではない。誰かに貼られた見えないラベルを気にしながら生きるのは、少し窮屈だとも思った。そもそも『好き』なんて、自分自身の感情で、他人がどうこういうものじゃない。高倉くんは、ちゃんと自分の『好き』を見つけて大切にしている。私は、そんな高倉くんをとても尊敬している。


 だけど「うん、大親友だよ!」――そう、高倉くんに伝えたあの日から、もう1週間も高倉くんのSNSのポストが止まってしまった。前は3日と開けたことがなかったのに。何かあったのだろうか?


「高倉くん、最近もしかして体調悪い?SNSのポストも止まっているし、親友としてちょっと心配。」


「親友、な。いや、俺、女装やめよかな思ててん。声だけやのうて、背も伸びてきて着れん服も増えたし。まあ自分で勝手に“似合わなくなった”って思っただけかもしれへんけど。」


「えっ、もったいない! 高倉くんは、超かわいいよ。SNSのフォロワーさんたちも、きっと変身メイクの更新待ってると思う。私も、次の動画、早く見たいし!」


「――そめやんがそう言うんやったら、ストックは撮りだめてるし、出すわ。」


「約束だよ。」


 その日の晩、久々の更新があった。いつも通りの高倉くんがそこにいた。画面の中では、性別なんて関係ない。ただ、圧倒的にかわいくて、美しくて、見とれてしまう。メイク小物の使い方だって、繊細で無駄がない。アイシャドウのぼかし方ひとつで目が何倍も大きく見えるし、チークを頬の高いところにおくと今流行の小顔になっちゃう。まるで、指先から魔法が流れ出しているみたいだった。


 正直、スマホの画面越しでは、高倉くんの背が高いのか低いのかなんて、あまり分からない。実際には、私より拳ひとつ分くらい背が高くて、多分170cmくらいだと思う。そのくらいの身長なら、女の子だったとしても、むしろかっこカワイイって言われるはず。すらりとした体つきの高倉くんなら、きっと似合う服もたくさんあるのに。そう思いながら、私は動画を見終えて、スマホをそっと伏せた。


 ……どうして、やめるなんて言ったんだろう。

 もしかして――私が「男の子が好きなの?」なんて聞いたから?高倉くんを傷つけるつもりじゃなかったのに。


 投稿が再開して、しばらくは動画の更新が続いた。でも、期末試験の1週間前、またふっと止まった。私もそのことに気づいたけど、高倉くんもテスト勉強が忙しいんだろうなと思って、特に気にしなかった。

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