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高倉くんのカワイイを応援したい!  作者: 志熊みゅう
第二章 カワイイは誰のもの?

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5. カワイイは誰のもの?

 メイクをして建物の外に出ると、さっきと世界の色が変わったように感じた。原宿の街並みも行きかう人たちもなんだか少し違って見えた。


「裏道にもカワイイお店、あるらしいねん。」


 高倉くんがそう言って、竹下通りとは別の裏の通りへと入っていく。こっちは人も少なくて、どこか落ち着いた空気が流れていた。ふと見つけた古着屋さんに入って、鏡の前で気になる服を何枚か当ててみる。ちょっと派手かなと思ったけど、今日はいつもと違う雰囲気の洋服も似合う気がした。


「そういえば高倉くんは、女の子のお洋服はどこで手に入れているの?」


「せやな、姉ちゃんがようくれるねん。あの人、めっちゃ服買うんやけど、飽き性やから、一回着たらもう着ぃひん服、結構あるんよ。」


「いいなあ、そういうお姉ちゃん、私も欲しい。」


「おしゃれやし、メイクもうまくて、自慢の姉ちゃんやねん。」


 いくつか試着してみて、最後に選んだのは、水色の地に白の水玉、クルミボタンがアクセントになったワンピース。いつもの自分なら手に取らないような、とてもガーリーで、かわいい一着だ。


 試着室から出ると、高倉くんが、ピンクとオフホワイトの半袖ニットを2着、手に取っていた。


「そめやん、そのポルカドットのワンピ、めっちゃかわええな。これもおそろで買わへん?」


 ――2枚のニット、よく見ると少しデザインが違うけど、遠目だと同じデザインの色違いに見える。


「せやな。こっちの方が、そめやんには似合うと思うで。」


 そう言って、高倉くんがピンクのニットを手に取った。淡いピンク色で、ふわふわモコモコした見た目がとてもかわいい。思わずさわりたくなるような、やわらかそうな質感。さっそく試着してみる。こんなに甘い服は初めてだけど……すごくいい感じ!


「ばっちりや。そめやん、めっちゃカワイイ。」


「そうかな!」


 私はピンクのニットとポルカドットの水色のワンピースを買い、高倉くんはオフホワイトのニットと、別に試着していた真っ赤な花柄のワンピースを買った。


 満足して店の外に出ると、同じくらいの年頃の子たちの話し声が聞こえてきた。


「うわあ、あのふたり、かわいくない?モデルさんみたい!」


「もしかして芸能関係のお仕事しているんじゃない?だってここ東京だし。」


 "モデルさんみたい"っていうのは、スタイルのいい高倉くんのことかなって思ったけど、さっきの男の人たちとは違って、自分のこともカワイイと言ってもらえたのが、うれしかった。


 ――でも同時に、思った。カワイイってなんだろう?


 バニーホップのココ、マシュー、パメラはカワイイ。

 マシューのパンケーキもカワイイ。

 虹色の綿あめもカワイイ。

 早乙女さんもカワイイ。

 高倉くんもカワイイ。


 だけど、高倉くんにメイクしてもらって、私への視線の向けられ方はまるで変わった。さっきまで見向きもされなかったのに、カワイイ、モデルさんみたいなんて言われた。カワイイって何なんだろう?誰が決めるの?誰のものなの?


「高倉くん、カワイイって何なんだろうね?誰が決めるんだろう?」


「俺な、『カワイイ』って自分を動かす原動力やと思うねん。せやから、他人が言う『カワイイ』にいちいち振り回される必要はないし、他人の評価ばっか気にして『自分はかわいいんか?』って悩むんは、なんか違う気がすんねんな。」


「でも、カワイイって言われている子の方が得だよね。早乙女さんとか。」


「早乙女さん、あれで今どきの“美人”やないで。愛嬌と肌の白さで得してるだけや。」


「早乙女さんのこと、そんな風にいえるの高倉くんだけだよ。」


 思わずおかしくなって笑った。


「ほんま、おかしな世の中やで。時代が変われば、美の基準もコロコロ変わんのに。顔が小さく見えるとか、幼い顔の方がカワイイとか言うて、中顔面がどうこう言われ出したんも、つい最近の話やろ。」


「へえ、そうなんだ。知らなかった。」


「平安時代なんて、ぽってりした頬が美人の条件やったんやぞ。今とは全然ちゃうやろ?美の基準なんてほんま気まぐれや。だから、俺は自分が『好き』って思うものを大事にしたいんよ。だから、メイクしていようが、していまいが、そめやんは俺にとってカワイイ。」


 平安美女を引き合いに出されて、少し複雑な気分になったけど、高倉くんにカワイイと言われたのはうれしかった。

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