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暗い過去

「まぁ、何でもかんでも思い通りにはいかないよな・・・」


「ご主人さま、どうかした?」


 俺が、頭を抱えていると、心配そうに奴隷が話しかけてきた。



 「い、いや、何でもない。そういえば、なんでお前はあんなしゃべれない状況になってたんだ?」

 とっさに俺は、話題をきりかえた。




 それを聞き、奴隷は下を向いた。明らかに、暗い雰囲気になった。

 (やべっ、うかつだったか?)

 俺は、焦って無神経な質問をしてしまった。と思いながらも冷静に、


 「言いたくないなら、無理に言わなくていい。誰だって、思い出したくない事や知られたくない事なんて、いっぱいあるからな。」


 俺は、起こした火の管理をしながら、言った。


 火の前に足を抱えて座っている奴隷は火をジーっと見つめながら、たらーっと涙を流し始めた。


「やっぱり、ご主人様はやさしい人なんだね。」


 と火を見ながら言った。涙を流していたがさっきまでと違い奴隷の目には光があり、感情があるように見えた。


 俺は、その様子を見てかなりの苦労をしたんだろうと何とも言えぬ気持ちになり、アトラクション感覚で転生してきた自分が恥ずかしくなった。そういう気持ちから、


「俺なんて、そんな大層な人間じゃない。」


 と答えた。


 「ううん、私が今まであってきた中で、私自身の心配をしてくれる人なんていなかった。ましてや、今のあたしは奴隷だし。」


 「別に、俺にとっては人として普通のことをしたつもりだ。」


 「ふふ、、、、、」

 奴隷は少し笑顔を見せた。そして少し真剣な顔になり、

 「ねぇ、本来、奴隷がご主人に自分語りなんてダメなのかもだけど、聞いてくれる?」




 奴隷は体操座りで上目使いで俺を見ながら聞いてくる。



 「ああ、別にそれで楽になるなら。それに、俺でいいなら。」

 俺は、火に木の枝を入れながら答える。



 「ありがと....長くなるかもだけどごめんね。」

 そう笑顔で答えた後、まじめな顔で、火を見ながら話し始めた。




 「あたし、これでも最初から奴隷ってわけじゃなかったの。フツーに、村で小さい頃は楽しく暮らしてた。だけど、孤児で親は最初からいなかったの。あの時代は、戦争も多かったから捨てられたのか分かんなかったけど、物心つく頃から村の教会に預けられてたの。そん時は、別に裕福じゃなかったけど毎日同じ協会の子と遊んだりして幸せだった。あの日が来るまでは。」

 何かを思い出したのか、奴隷の目がうるッとする。




 「戦争に巻き込まれたの村が。私の教会は戦争の攻撃対象にならなかったけど、戦争のどさくさに紛れて山賊たちに襲われたの。そいつらの狙いは教会の資産とかじゃなくあたしたちだった。私たちは孤児だから連れ去っても親とかに怨みとかを買いにくいし、戸籍とかもわかりにくいから人身売買の絶好の的だったみたい。私たちは、全力で逃げようとしたんだけど、友達が目の前で捕またんだよね。そこで、私は無理やり不意を突いてとびかかって助けたの。それで、その子を逃がして私も逃げようとしたんだけど捕まったの。」


 


 「そして体を縛られて、奴隷商に売られたの。そこからは、最悪な生活の始まりだった。容姿がいいからって性奴隷とし売られることになったの。そこから、男未経験の方が高く売れるとかで、女の教官みたいなやつにずっと一日中、性技の叩き込まれた。少しでもミスっちゃえば鞭で叩かれまくった。泣くだけでも叩かれて、体があざだらけになってたのを覚えてる。そこから、3年ぐらいたって奴隷として売られることになった。でも、まったく売れなかったの。あたし、性技そんなうまくならなかったから。高級性奴隷って完璧じゃないと売れないらしくて…それに、あたし性技自体嫌で仕方なかったから…各地のオークションで売れ残ったのを覚えてる。そのたびに、奴隷商長に怒られて叩かれまくったの覚えてる。そんな、生活を繰り返して、(あたしなんで生きてんだろう)て思ってるうちに、感情が表現できなくなっていって、何も感じなくなったの。そうなったら、余計に売れなくなったの。そんな中、いつものように売れ残ったオークションの帰りにご主人様と出会ったの。」


 

 「・・・・・・・・」

 (う、鬱展開過ぎる....生々しすぎてなんもいえねぇ…)

 俺は、話を聞き予想以上の話の重さに何も言えなくなっていた。だが、あれだけ、感情を失っていたのも合点がいく。

 そして、この世界の厳しさを実感する。


 一方話し終えた奴隷は、涙をぽろぽろこぼしながら体操座りで、体をゆすりながら火を見ている。

 きっといろんな感情が錯綜しているのだろう。


 「苦労したなよく頑張ってここまで生きてきたなと俺は思うよ。」

 俺は、励ますようにやさしく問いかける。




 すると、次の瞬間

「うーーー、わぁーーーーん!」

と俺の言葉を聞いた奴隷が俺に向かってとびかかり、俺の腹に顔をうずめるように抱き着きながら泣き始めた。



 俺は、咄嗟のことに驚いたが、心情を察し受け入れ、肩をやさしく叩く。


 「あたし、つらくて、つらくて、わあああああああん!」




 と感情を吐き出して泣いている。




 俺は奴隷をなだめながらも。いかに自分がこの世界をなめていたかを思い知らされた。

 俺は、考えながら、奴隷が泣き止むまでやさしく対応した。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 「おちついたか?」

 「うん、ありがと」




 小一時間泣き続けた奴隷は、目を少し赤くしていた。



 そんな奴隷に俺は、

 「あんたも苦労してきたんだな。でも、よく聞いてくれ。

ここから、あんたは好きにしていいんだ、その親友に会いに行ってももいいし、普通の生活だって送たっていい。この奴隷契約だって解消してもらってかまわない。君の好きなようにいきなよ。」


 俺は、励ますように言った。

 (まぁ、正直、奴隷契約をwin-winで解消できるかもだし。奴隷連れまわして冒険したら女神様に速攻消されそうだしな。)

 正直、奴隷契約解消っていう目論見もあったが。


 

 それを聞いた奴隷は、

 「あたしの好きなように?」

 と聞き返してきた。


 俺は、

 「ああ!」

 俺は笑顔で答える。


 すると奴隷は真剣な顔でこちらを向き、

 「改めて、あたしをご主人様の奴隷としてそばにおいてください!」

 こちらに向かって頭を地面につけ、丁寧に土下座をして大きな声で懇願したのだった。




 俺は、予想外の展開に目をぱちぱちさせながら開き驚き言葉がでなくなる。



 「は、はぁ?せ、せっかくなんでもできるんだぞ?」


 と俺は心の中で(正気か?)と思いながら頭を抱える。

 

 そして、奴隷はガバッと頭を上げてこちらを見ながら、


「確かに変なことを言ってるのかもしれないけど....今まで、あたしをこんなに心配してくれる人なんていてくれなかった。それどころがこんなあたしを死ぬ気でかばってくれるたし、それに、ご主人様と出会わなかったらいつまでもあの場所で売れ残りとして生きていくしかなかった。それに、今のあたしが感情を取り戻したのもご主人様のおかげ…あたし自身がずっと一緒いたいの。ずっと、さっきみたいなぬくもりが欲しいの。ねぇ、お願い、いいでしょ?私、これでも尽くすよ?嫌?」


 と目をうるうるさせながら懇願してくる。


 (うッッッ、こ、ことわりにくい!)

 俺は、その必死な顔に圧倒される。そして、


 「い、いや…別に嫌とかじゃないけど…」


 「だったらいいってことよね。」

 奴隷は顔を近づけて懇願してくる。

 俺はその圧に押され小さくうなずいてしまった。


 それをまじかで見たどれは「やった!」と喜び始めた。

 俺は完全に完全に押し負けてしまった。



 そして、奴隷は俺を見て目をパァッと輝かせ


 「ありがとーーーーご主人様ぁ!、ずっと一緒にいてね。」

 とギュッと抱きついてきた。

 (こいつ、性格が変わったようにぐいぐい来るな…)


 と思いながら大喜びしている奴隷と裏腹に、俺は抱き着かれた恥ずかしさと命の責任の重さがのしかかってきた感覚で絶妙な顔をしていた。


 (どうなるんだろう俺の異世界生活…)


 俺の、異世界生活は悩みが付きなさそうだ。

 

 これが、始めの仲間?だった。


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