初狩猟
ザス、ザス、ザス…
「・・・・・・」
ザス、ザス、ザス、
俺達は無言で樹海の道を歩き続けていた。
途中会話もなく、何度か、名前やらこの土地のことなどを訪ねてみたが返事もなかった。
ただ俺の言われたとおりに真顔で後ろをついてくるだけだった。
「はぁ。」
俺は転生してきて何度目だろうかというため息をつく、本当にこれからどうなることやら、そんなことを考えつつも道を歩き続けていた。
まぁ、もうそんなこと考えててもしょうがない。
この食料も武器もないジリ貧の状況をどうにか打開せねば。と考えていた。
だが、本当になにもない状況だ。おまけにひどく喉が渇いてきた。
それに、普段ほとんど歩かない俺にとって、この山道は堪え、疲労困憊だった。
先程のように、思いっきりジャンプする力もないし、もう怖いのでしたくもなかった。
悶々と頭の中で弱音を吐き続けながら、歩き続けていると
サァァァァァァ
と水の音が聞こえてきた。
俺は、その音に吸い付いていくように道を走り進むと音は大きくなり、歩いていた道と川が合流したのだった。
喉の渇いていた俺は目を輝かせ川に駆け寄る。
浅い川で水は透き通っている。まさに、渓流といった感じだ。
俺は、すぐに顔を付け水をごくごくと飲む。
「ぷはぁーーーーー」
俺は、CMのようにうまそうに水を飲み声を上げる。
今までの人生で最高にうまい水だった。まさに、生き返ったて感じだ。
そんな俺の後ろに奴隷の女が立っていることに気が付く。
「おい、あんたも飲みなよ。死なれたら困るし。」
と後ろで見ていた、奴隷に声をかける。
最初は、遠慮していた感じだったが、俺の顔を見て命令と感じ取ったのか、川の近くに座り、手で水をすくって飲み始めた。
俺は、水を飲む奴隷を見つめていた。
ここに来るまであまりじっくり見ていなかったが、改めて見直すと、思った以上に美人だ。髪型はロングで、ベージュと金髪の中間の色の髪の間から見える顔はとても整っている。ただ肉付きはあまりよくなかった。
あの、奴隷商は高級奴隷と言っていた、奴隷にもランクか何かがあるのだろうか。その中でも高級とすると、いい暮らしを受けていたのだろうか。だが、この身なりを見るととてもそうは見えなさそうだ。などと奴隷を見ながら俺は考えていた。
奴隷を見るのをやめ、
「まぁ、そんなこと今考えても仕方がねーか。」
と俺は考えることをやめ、休もうと楽な姿勢になろうとした。
その時だった。
ごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
森の中から大きなクマのようなモンスターが飛び出してきた。
一息つくことすらできないどころか、どんだけ不運なんだと俺は、サァァァァァァと目の前の渓流のような涙を真顔で流していた。心が壊れそうだ。
だが、俺が悲しんでいても、モンスターは歩みをやめない。
そのモンスターはまさに熊といった感じだが、毛の色は青く、目は赤く光り、動物園で見るようなものよりも一回り大きかった
。
グルルルル
よだれを鋭い牙の間から垂らし、まさに俺たちを餌として見ているようだ。
俺は、すぐに立ち上がり、焦って逃げようとする。
「おい、逃げるぞついてこい!」
と叫び、奴隷をつれて走りだそうとする。
が、奴隷は動かない。
「おい、何してんだ行くぞ!」
俺は決死に叫ぶがやはりピクリとも動かない。
一方、モンスターはズシンズシンと歩みを当然やめない。
そして、奴隷の前に立ちふさがった。そして、大きく振りかぶり攻撃態勢に入る。
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は、咄嗟に叫びながら、奴隷に駆け寄り奴隷を投げるようにかき分け振り払い、捨て身で奴隷をかばうように飛び込みながらモンスターに向かってタックルを繰り出す。
どこぉぉぉぉ、ひゅーん、がらがらがら
その瞬間、モンスターの体がバッティングのボールのように吹き飛ばされ、転がっていた。
吹き飛ばされたモンスターは牙がおれ、ボロボロの状態になっていた。
だが、よろよろとどうにか立ち上がる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…!」
俺は、呼吸が荒くなりながら立ち上がろうとするモンスターを満身創痍で睨み続けていた。
それに、気が付いた熊は焦るようによろよろと逃げて行った。
「はぁ、はぁ、はぁーぁ」
と俺は息切れしたまま、安堵しその場に尻もちをついた。
俺は、モンスターを吹き飛ばした腕を見つめる。
(あんなサイズのモンスターも吹き飛ばせるのか。)
自分のやったこと実感がいまだわかなかった。
だが、そんなことよりもと、立ち上がり奴隷の方に駆け寄る。
「おい、大丈夫か!」
さすがにこの状況に驚いているようだ。
だが、俺は、
「おい、しっかりしろよ!あんたが奴隷でどれだけつらい思いをしたのかはわかんねぇけど、少しは自分を大切にしろよ!あんただって生きてんだろ!」
と俺は苛立ちながら、奴隷の肩を掴みゆすりながら決死の顔で問いかける。
すると、その奴隷は下に俯き始めた。
「ぃ、ぃの?」
小さな声が聞こえてきた。俺はとっさに「はい!?」聞き返す。
すると、少しづつ顔をこちらにあげながら、
「いいの?私、自我をもって生きて。」
と問いかけてきた。その顔は、涙でびしょびしょで鼻水がたれ、まさに号泣といった感じだった。
俺は、(何こいつメンヘラ?)と思いつつも
「も、もちろんだ。その体はあんた自身のもんだ。当たり前だろ。」
動揺を隠せない声で、回答する。
その答えを聞き奴隷はまた泣き始めた。
俺は、予想外の展開に動揺して黙ってワタワタしていることしかできなかった。そして、
(ていうかこいつ、普通にしゃべれるんかーい)
心の中で叫んでいた。
◇◇◇
パチパチパチ
あれから、奴隷が泣いている間、何もせずにはいられないと思い、上着を奴隷にかけ、その辺の木を集めて、かなり苦戦したが昔のキャンプ知識を生かして火を起こした。
そして、その火を囲うように奴隷と座っていた。
「やっと、おちついたみたいだな?」
やっと泣き止んだ奴隷に話しかけた。
「うん。ご主人様、まじやさしーね。ありがと。」
俺は、その言葉に背筋が凍り、固まった。
(え?なんでこいつギャル口調なの?)
「ん、どしたの?ご主人様?」
その瞬間、日本にいたときのことを思い出してしまった。
なんか一気に異世界ムードがぶち壊された気がした。
「はぁ、異世界も想像していた通りには行かないな。」
俺は自分のファンタジーの世界観が壊れた音がして、頭を抱えていた。
読んでいただきありがとうございます。新人のぺーぺーなので感想や意見いただけると勉強になるため助かります、