第51話 **『“誰かの匂い”がする布団と、知らない夜のしみ』**
雨音が、静かに屋根を叩いていた。
窓の外は、すっかり秋の長雨。
布団を干せる気配もないまま、部屋の中には、こもった湿度と、わずかな柔軟剤の残り香が漂っていた。
深夜0時過ぎ。
歯磨きも風呂も済ませ、今日もパンツは全員分干し終えた。
ようやく俺は、布団に潜り込んだ。
――その瞬間。
「……ん?」
ふわりと、鼻腔をくすぐる甘くて淡い香り。
……ラベンダー? いや、もっと柔らかくて、どこか体温の混じった匂い。
俺は思わず、顔を横に向けて確かめた。
枕元のタオルケット。
……これ、俺のじゃない。
見覚えのない、**明らかに“女子の布”**だった。
「……これ、誰の布……?」
ふんわりとした香り。
少し湿った繊維に残る体温の痕跡。
そして、言葉にできない安心感。
俺の心臓が、ゆっくりと跳ねる。
パンツを干す日々には慣れてきた。
でもこれは――違う。
パンツは“脱いだ布”。
だけど布団は、“一緒に過ごした布”。
その夜、俺は布団を抱きしめたまま、
“知らない誰か”の香りに包まれながら眠りについた。
そして、朝。
雨は止んでいなかった。
けれど、空気はどこか静かで――不自然だった。
居間に出ると、ヒロインたちが揃っていた。
だが――全員、どこか妙によそよそしい。
「おはよ……?」
「……おはようございます」
「う、うん、おはよう」
「は? 何よ、普通でしょ?」
「(観察中)」
「……お布団、ちゃんと寝れましたか?」
誰も、目を合わせようとしない。
けれど全員、どこか**“様子を見てる”ような雰囲気**。
俺は、まだタオルケットの香りが鼻の奥に残ってるのを感じていた。
あの夜、確かに――誰かがそこにいた。
悠真のモノローグ
パンツの香りもすごかったけど、
布団は……なんていうか……
**“心ごとしみ込んでくる”**感じがした。
誰かの体温。
誰かの眠気。
誰かの恋心が、
この布に……残ってた気がする。
「パンツより……こっちのほうが、エモいかも……」
思わずそう呟いて、
ヒロインたちの頬が、一斉にぴくりと引きつった。




