第49話 **『無臭パンツ肯定派VS否定派!布地バトル会議、勃発』**
午後。
俺の部屋に敷かれたちゃぶ台のまわりに、ヒロインたちが集まっていた。
その中心には――
7枚のパンツ。
吊るされたものもあれば、折り畳まれて整えられたものもある。
そしてその中に、ひときわ清潔な布が、ひっそりと横たわっていた。
それが、つばさの“完全無臭パンツ”。
「私は間違っていないわ」
つばさはきっぱりと宣言した。
「科学的に見れば、菌や臭いが残っている方が不衛生。
布とは、機能を満たすための存在。
感情など、本来そこに必要ないのよ」
「必要なくてもさ――」
みずきが割って入る。
「**“貼りついてても香ってても、それがあたし!”**なんだよ!」
「水泳の後、びっちょびちょのパンツ履いて、ムレムレで……
でもそれが、“今の私”って気がしてた!」
レナが続く。
「だよな……ムレててもいいんだよ。想いがあるなら!」
「完璧で無臭で清潔な布? それ、ただの戦闘服じゃんかよ」
「パンツってのは、汗も涙もおしっこも吸って、それでも『これが私』って言えるもんだろ!」
セシリアが紅茶を啜りながら、微笑む。
「完璧な布に心が宿るなら、王宮に干された純白のパンティーが最も官能的になるはず。
でも、誰もそれを“愛おしい”とは言わない。
“不完全な香り”こそが、恋を運ぶのよ。」
くるみがパンツにそっと鼻を近づけ、目を閉じた。
「……香りって、気持ちの断片なんです。
“この人、何を思って干したんだろう”って……想像できる、柔らかさがある」
「消臭された布は、想像の余地がゼロ。
つまり――心の触れ代がないんです」
つばさは震える声で言い返した。
「で、でも! 菌が! 繊維が! 洗剤残りが!
論文が、試験データが……っ!」
ことりが、おずおずと口を開いた。
「……でもね、つばさちゃん」
「わたし、自分のパンツに香りが残ってたの、ずっと恥ずかしかったけど……
悠真くんが“干してくれる”たびに、
その香りを、ちゃんと受け取ってくれてるって思えたの」
「誰かに干してもらいたいって気持ち――
それが、わたしの“香り”だったんだよ……」
静かに。
だけど確実に、場の空気がつばさを包み込んでいく。
彼女は、膝の上にパンツを置いたまま、そっと指先で布をつまむ。
「……でも、じゃあ私は……
“菌を気にしてる自分”が間違ってたの?」
そのとき――悠真が立ち上がった。
「違うよ、つばさ」
「お前が洗ったパンツも、お前自身なんだ。
無臭でも、ムレてても、香ってても、
誰かが『これは私』って思うなら――それがパンツなんだよ」
悠真のモノローグ(途中)
みんな違って、みんなしみ。
香ってても、無臭でも。
パンツは、履く人の気持ちを語ってくれる。
だったら俺は――
どんな布でも、ちゃんと干して受け止める。