第3話『パンツ二重苦!? 三角関係、湿ってます』
朝の教室。
なんとなく、空気が湿っていた。
いや、天気じゃなくて、人間関係的な意味で。
俺の席を中心に、
清楚代表・七瀬ことりと、
スポーティ暴走娘・天野みずきが、無言の火花を散らしていた。
「おはよ、白井くん。昨日のパンツ、どうだった?」
「ちょっと! それ、あたしのより先に洗ってたヤツでしょ!?」
「うん、だって私は“お願い”したから。白井くん、ちゃんと応えてくれたの」
「へぇ〜? それってつまり、お願いすれば洗ってくれるってこと?」
「……みずきちゃん、声、少し大きいよ」
(なんなんだこの会話!?
パンツについての口論って、なに!?)
俺の席で繰り広げられるパンツ討論。
しかも隠語ナシ。ガチのパンツ会話。
他のクラスメイトたちは、なぜか“話題に触れてはいけない空気”を察して黙っている。
いや、おかしいだろ!? 俺、別に下着ドロとかじゃないからね!?
そして、放課後。
事件が起こった。
「お、おい、これ……!」
男子が騒ぎながら拾い上げたのは――
派手な赤と黒の“勝負パンツ”。
その瞬間、クラスの空気がピシッと凍る。
「天野のだよ、それ!」
「うわぁああ!? 誰だよ落としたの!?」
ざわめきが広がる教室。
そして――
「ちょ、ちょっと! 白井っち!? なんでそれ、白井っちの机の下にあんのよぉおおおお!!」
「えぇえええええっ!?!? し、知らん! 俺のせいじゃないっ!!」
完全に濡れ衣である。
でも、“勝負パンツ”と呼ばれたその下着は、なぜか俺の机の下にあった。
(ど、どうしてだ……!? 誰の仕業だ!? ってか、これ本当にみずきの!?)
「……違うと思います」
ことりが、静かに言った。
「白井くんは、そんなことする人じゃない」
空気が止まる。
「それに、みずきちゃんも、自分で“教室に忘れたかも”って言ってたでしょ?」
「え……あ、う、うん……。昨日の体操着に一緒に入れてたかも……って、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!!」
みずきが顔を覆って、崩れ落ちる。
「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛んっ!! なにやってんだよあたしィィ!! バカかよぉおおお!!」
パンツ騒動、終結。
ことりの機転で、事なきを得た。
帰り道。
俺の左右には、なぜかことりとみずき。
この状況、すでに**ギャルゲの“親密度選択ルート分岐前夜”**なんだが!?
「……白井くんって、案外、頼れるよね」
「いやいや、頼れるとかじゃなくて……。パンツが落ちすぎなんだよ、うちのクラス……」
「ふふっ……でも、私が拾ってもらったの、白井くんで良かったよ」
ことりが、照れたように言った。
そして――
「しっかし、まさか“匂い嗅いでくれた?”って返されるとは思わなかったなぁ〜! うっわ〜女子的に死にたいやつ〜〜!」
「えっ」
……あれ?
なんか、俺、また誤解されてる??
次の日。
俺の机の上に、**新品のパンツ用洗剤と“香りのサンプルカード”**が置かれていた。
ことりの字でメモが添えられていた。
「“今度はこの香りで”って……ダメかな?」
そして、みずきの走り書きも。
「マジで頼んだ! 勝負パンツだから! あとで見せてもらっても文句言わないから!」
(俺の青春……パンツで濡れていく)