第34話 『濡れ布地と湯けむりと、共同風呂の夜』
合宿2日目、夜。
「はぁぁ~……極楽……」
湯けむりに包まれる山の天然温泉。
のぼせるほどの熱気と、夜の虫の声、そして――
男女共同タイム。
「え、なにそれ地獄じゃん!!!」
俺の叫びに、先生はにっこりと告げた。
「1時間だけね。脱衣所は別だけど、お風呂は男女共有よ~。
でも覗いたら、**“生徒会に報告”+“人生終了”**だから、くれぐれもね?」
結果──
「白井。覗いたら死刑な」
「見たら殺すからね?」
「私は“布で絞める”よ?」
「……それはそれで興奮……じゃなくて!!」
俺は**「死刑四重奏」**の宣告を受け、完全に湯煙の奥へ退避した。
そして女子脱衣所。
「……濡れたパンツ、どこ置けばいいのこれ……」
ことりがしっとりと頬を染め、パンツをタオルに包んで置こうとする。
「この湿気で、また乾かないぞ……」
レナはボクサーを脱ぎつつタオルを構える。
「濡れたままこそ“真の素材性能”が問われる時です」
つばさは防水バッグにパンツを保管。
そんな中、
セシリアは――何も隠していなかった。
「ふふっ……濡れてないと、意味がないわ。
パンツも、心も。濡れてこそ、香るもの」
「何その名言っぽいエロ発言!!??」
風呂場。
俺がのぼせそうになっていると――
背後から、足音が近づく。
「……誰か来た!? 今だけは見ちゃだめだ今だけは……!」
「白井くん?」
「ひゃいっ!?」
振り返ると、
タオル一枚のことりとほのか。
しかも二人とも、髪先も体も、濡れていて――
体温と湿気が、タオル越しに感じられる距離。
「さ、さっき……パンツ、置き場なくて……」
「……白井くんが、ちょっとでも見てないって信じたから、来たの。信じてるんだからね……?」
そのまま、湯船の端に座るふたり。
俺、湯の中で思わず鼻血出そうになる。
さらに──
セシリア、湯けむりの向こうから堂々と登場。
赤い紐パン状態のまま。
「これが、濡れた文化布。」
「布じゃねぇよそれぇぇぇ!!ただの濡れた線ぇぇぇ!!」
そして、彼女はふと、俺の耳元で囁いた。
「ねえ、白井くん。……どこからが恋で、どこまでがパンツなの?」
「今、人生の深淵見た気がする!!!」
パンツの境界線があいまいになる夜。
湯けむりと羞恥と赤面と、少しの好奇心が――
ヒロインたちの恋心を、そっと湿らせていく。