第29話 『パンツノート奪取作戦!ヒロイン連合、初の共同戦線』
昼休み、屋上裏――
「……確認するけど、マジであんのね? パンツノートって」
「……ほんとに、悠真とあたしたちのこと、**“しみの種類”まで書いてあるの……っ」
ことりが涙目でつぶやく。
「許せねぇ……私のパンツ、勝手に“耐湿限界突破済”って分類されてたぞ……!」
レナの拳が唸る。
「実際のしみ具合を“pH値”で測るのは私の専売特許です。あれは盗用です」
つばさが眼鏡をクイッ。
「“パンツに宿る信頼指数グラフ”? こっちの顔が赤くなるっつの……」
みずきがプリントアウトされた1ページを見ながら震える。
そして、ノートの中には――
✎ パンツノート抜粋(地雷ver)
【白井×ことり】:干すまでの距離=16cm/指が触れた時間=2.6秒/→両想い予備軍
【白井×レナ】:パンツ角度修正=3回/赤面継続時間=8.6秒/→羞恥防衛反応
【白井×ほのか】:乾燥タオル投入=2回/→深層信頼形成フラグ(濡れ系)
【つばさ】:観察→洗浄→研究→観察ループ中(本人の意思)
ことり:「これ……このまま誰かに見られたら……死ぬ……」
みずき:「誰かじゃなくて校長に見られたら人生終わる……」
レナ:「というか、“恋のシミ曲線”って何だよ地雷すぎるだろコラァァァ!!」
「ということで! 作戦開始!」
《パンツノート奪取作戦コードネーム:布魂》
レナ&みずき:体育倉庫の裏ルートから突入&制圧
ことり:涙目で尾行・かわいそう担当
つばさ:しおりの机周辺に盗聴器(※家庭用)を仕掛ける変態策士
悠真:蚊帳の外(※主役だけど今回は観察対象)
そして放課後。
つばさの仕掛けた盗聴器が、
しおりの声を拾う。
『……やっぱり、来るんですね。
白井くんの“濡れた想い”を……奪いに』
──地雷、炸裂。
その言葉を聞いた全員の背筋がゾワッと凍る。
「ちょ、ちょっと待ってあの子やばいって!?」
「“しみ”のことを“想い”って言い換えるの、ポエム地獄じゃん!!」
「悠真が“濡らされた”とか書かれてたらマジで私たちどんな顔すればいいのよ……!」
つばさ:「ご安心ください。ノートの在処、特定済みです。机の中、茶封筒に保管されてます」
「よし、行くぞ。布の名にかけて!!」
「わー! 今パンツの名で誓ったよね!?」
しかし――
ドアを開けた瞬間。
そこには、ノートを手に持ったしおりが、
最初から待っていた。
「来ると思ってました」
無表情で、微笑みすら見せず、
ただ一言。
「だってあなたたち、パンツを大切にしてましたもんね。
白井くんの、布に触れる指先を奪われたくないでしょう?」
全員の目が泳ぐ。
「な……なんで“触れた指先”とか覚えてんのよ……!」
「というかお前、白井のどこまで見てんだコラァ!!」
しおりは、ゆっくりノートを抱きしめながら言う。
「でも、それでも……これは私の“記録”なんです。
誰にも渡しません。“濡れてしまった想い”まで、全部──」
そしてぽつりと、
「……大事だから。私の、“好き”だから」