第19話 『開幕!体育祭と、パンツ選び会議』
放課後の教室。
窓の外には明日設営される白いテントが並び、グラウンドからは応援団の掛け声が響いていた。
だが――教室内では。
「……で、明日、どのパンツで挑む?」
「いきなりそこかよ!?」
俺はペットボトルのキャップを落とした。
ふつう、“出場種目”の話とかするんじゃないのか!? パンツ先行!?!?
「パンツは……戦闘服です。性能・精神・想い出、全てが試される場、それが体育祭」
つばさの静かな名言から会議は始まった。
ことり:「“お守りパンツ”でいくべきか…でも、ちょっと心配で……」
「えっと……その……」
ことりが頬を染めながらカバンから、桜柄の小袋をそっと取り出した。
「この中に、昔お姉ちゃんがくれた“お守りパンツ”が入ってて……
でも、もう生地も柔らかくて、走ると擦れちゃいそうで……」
「でも、それを履くと勝てるって思っちゃう……そんな感じ?」
ことりはコクリと頷いた。
みずき:「通気と速乾、これこそ“走る者の選択”!」
「見よ、これがあたしのエースだ!」
みずきはドンと机に叩きつけるようにして、
水色の星柄×メッシュ素材のスポーツパンツを見せつけてきた。
「もうこれ、走るたびに乾くから。汗かいてもムレない。神。」
「でも、柄の星が透けるんじゃ……」
「透けてもいい!勝つためだし!」
ストイックすぎて逆に清い。
レナ:「絶対に透けねぇ。あと、絶対にバレねぇやつ」
「……あたしのは、これだ」
レナはさりげなく、真っ黒なボクサータイプのパンツを広げて見せた。
「透け防止。滑り止め。抗菌。
ついでに“くい込み防止ライン”もある。完璧」
「なんか、装甲みたいだな……」
「で、でもレナ、動くと前の部分、ちょっと“浮く”って噂……」
「だまれことりぃぃ!!///」
つばさ:「こちら、試作“第六型”。吸汗・芳香・抗菌・記録機能付きです」
「ご覧ください。
これは私がこの日のために設計した、“芳香性自己調整型スポーツランジェリー”。」
「なにそのガンダムみたいなネーミング!?」
「運動強度に応じて香りが変化し、かつ……**“おしっこ成分検出時に色が変わる機能”**もついています」
「ぜったい誰にも履かせちゃダメ!!!」
「なんでそんな爆弾機能搭載したの!?」
ほのか:「……私は、その……濡れないといいなって」
ほのかは、静かに視線を伏せた。
「わたし……緊張すると、ついトイレのタイミングを逃しちゃって……。
だから、ちょっと厚手のパンツを履いてみようと思ってるんですけど……」
その一言に、ことりが「分かる~」と即共感。
“もしもの時”を考えて、誰もが心配してるのだ。
そして──なぜか全員の視線が、俺に向いた。
「で、白井くんは?」
「えっ、俺!?」
「明日、“パンツ応援係”よろしくね!」
「待って待って、俺それ知らない!?」
「ことりのパンツが崩れたら即調整、みずきがムレたらすぐ通風、レナは走ったあと冷却、つばさは記録係補助……」
「役職多すぎない!?」
「大丈夫。“匂いで判断できる能力者”でしょ、白井くん♪」
「やめろその言い方あああああ!!」
ラスト・モノローグ(悠真)
パンツって、布一枚のはずなのに。 誰かの努力、祈り、不安、そして好きな気持ちまで吸い込んでて。 明日、あの布たちはどれくらい濡れるんだろう。 でも、それ以上に――
どれくらい“想い”が染み込むんだろうな。