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「……紫がいちばん近いから、とあなたはいいました。そして、その先はもう見えないから、とも。もちろん比喩だったのでしょう。でも、それなら赤だって同じ、と指摘する気は起こりませんでした。直感的に、あなたのほうが正しいと感じたからです。
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あなたに源蔵さんの話をしたわけは、もうわかってくれたものと思います。あなたはそれが、夢のような出来事だった、といいました。でも、その体験をしたのは、あなただけではなかったのです。もっともあなたは、その中でわたしは大人だった、といいましたから、それは本当に夢のような体験だったのかもしれません。あるいは、いまのあなたが生業としているご職業とすでに関連づいていたのでしょうか?
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未来のことが見えることがある、と、かつてあなたは仰いました。はじめてそれを伺ったときには、とても自信なさげで、実はいまだって心の奥底ではそう思っておられるのかもしれませんが、そのときは本当に、自身困惑されておられるような、さらにいえば、どこか危険な秘密を打ち明けるような、そんな風に感じられました。そのときは、その妖しい秘密を共有するのがどこか背徳のような気がして、全身が打ち震えたものです。その後、数年に亘るお付き合いのうちで、そんな幻想は消え去ってしまいましたが…… その思いだけはいつまでも心の中に残っており、この先、大きくなることはあっても、決してなくなってしまうことはないと信じております。
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それに、こんな風に夢想することもあるのですよ。その異形の集団、異人の仮面サーカス団の摩訶不思議な興行をあなたがご覧になられたとき、その観客の中には、わたしもいたのだ、と。そしてそれは、あのときの出来事とも関連して