血塗れのマリオネット
ごめんなさい、主人公まだ出て来ません。主人公なのに。(>人<;)
「また、大会中止か」
筒井 貴史はそう呟きながらも、いつもの日課になっている早朝ランニングに出かけた。家を出る時、まだ誰も起きてこない静かな玄関がパタンとしまる音がやけに胸に虚しく響いた。
いつもの事だが、昨日、知らないシャンプーの香りをまとませて、帰ってきた妻に腹が立つのを通り越して、呆れた。
彼女がいつからか浮気をしている事は知っている。ありがた迷惑な事に、彼女が若い男とホテルに入るのを見たと同僚の鈴木 香澄から聞いた。
その後、彼女を問い詰める勇気もなく、自分はその香澄と浮気している。もしかして、自分とそういう関係になる為の香澄の嘘かとも思った時もあったが、こうも、毎週金曜日、知らないシャンプーの匂いのする少し濡れた髪で、遅くに帰ってくる妻を見ると浮気しているのは本当のようだ。
子供は気がついているのだろか。もう大学生になる息子と娘。最近は同じ家なのに顔をあわせる事さえ少ないが、妻とはよく話しているはずだ。
自分の家のはずなのに、疎外感をいつも感じる。今まで必死に仕事ばかりしてきて、家庭を妻に任せてきた代償だろうか。
とふと、通りの向こうで聞こえた怒鳴り声に足を止める。
「こなくそ!」
目の前の街灯が、チカチカッと点滅して、なんだか背筋に寒気が走った。
後ろから走ってきていた爽やかな青いジャージの青年が立ち止まって、貴史に声をかけてきた。
「何か酔っ払いの喧嘩でしょうか?」
2人なら心強いと、彼らはその声のした方へとゆっくり近づいてみる。
そんな、彼らが目にしたのは、冬の青白い朝の路上に血塗れでマリオネットのように倒れている女だった。




