2話 将軍とのご対面
「着いたぞ。降りろ。」
そう声をかけられ、馬車から降りた俺は目の前の光景を見て唖然としてしまった。
「なんだこれ…すげぇな」
「そうだろう。なんたってここは難攻不落と言われている要塞なんだからな!」
騎士は頭の鎧を脱ぐと、黒色の短髪をしていて30歳過ぎのような歴戦の兵士を思わせる顔つきをしていた。
そう自慢げに言うと高笑いをしながら俺の前を通り過ぎて行った。
そこにはとてつもなく大きな門があり左右にはどんな怪物が来たら破れるんだよ、と言いたくなるぐらいの壁が続いていた。
そう思い、騎士に続き門に近づくとあることに気づいた。
「これ…石じゃね?」
騎士に聞こえないくらいの声でそう呟く。難攻不落どころか一瞬で壊れてしましそうだなぁ。
「どうかしましたか?さぁこちらへ」
「あ、はい。すぐ行きます。」
とっさのことで答えてしまったため、潔くついて行くことにした。もうここまで来たら、なんでもどんとこい!と拳を胸の前で握り、門に向かい歩き始めることにした。
門を潜るとそこにはたくさんの騎士たちが慌ただしくしていた。
「なんだか忙しそうですね。あと、少し殺気立っているというか…」
「あぁ、最近この近くで凶暴な魔獣が目撃されてな。そのせいで今は報告書などに追われている始末だ。被害者も少なくない状況だ。」
「なるほど。そういうことだったんですね。」
「ああ。そういや、お前さん異世界人だろ?」
突然の発言に驚きを隠せず、身体が固まったように感じた。それは1秒にも満たない時間だろうが、内心的には1分以上動けない気分だった。
「お?それはもしや図星か?見るからに身体が硬直してるのが良くわかるぞ。」
「だったらなんだって言うんです?」
ここまでバレたら正直開き直るしかなかった。だか、騎士は思ってもみない反応が返ってきた。
「いーや、別に悪いって訳じゃねー。過去にもお前のような異世界人が来てこの国を守ってくれたという伝承が残ってる。どちらかと言うと喜ばしいことだな!これが事実なら、だが?」
「あ、ちょ…」
返事をする暇もなく、騎士はニンマリと笑うと「こっちだ着いてこい」と言い、手で合図を出してきたので、溜息をつきながら着いていくことにした。少ししたら一つの扉の前にたどり着いた。
「なんかこの扉だけ周りより少し丁寧に作られてません?」
要塞の中の廊下をここまで歩いてきたが、これまでみたのは主に木で作られ、周りを石や鉄のようなもので補強したようなものばかりだったが、ここは丁寧に加工され模様なども入っている。
「そりゃそうさ。この部屋こそ我が軍の将の部屋なんだから」
まるで自分のことのように語る騎士を見て、いつの間にか苦笑いしてた。
「おい、早く入んな」
そんなことを考えていると、騎士がいつ間にか扉が開けていて、中に1人の人物がいるのが部屋の外からでも分かった。
部屋の中は思っていたよりも広く、学校の教室より少し広いくらいに感じられた。華やかに飾られていてるのを見て内心驚いた。
騎士に案内され、机に向かって書類の山に頭を悩ませている1人の女性が座っていた。
「将軍!街中で通報のあった不審者らしき人物を連行しました!」
敬礼をし、喉から出ているような大きな声で報告をするをする騎士が斜め後ろにいるのが感じられた。やりきった感が顔に出てるっつーの!
「君が…?」
手を付けている書類を片付けると頭を上げると全身を見るように視線を動かした後、そう呟いた。
文字通り。この部屋に来て初めて、将と呼ばれる人物と顔を合われることになった。