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第十六章:Payback Time/03

『ターゲット、エディ・フォーサイスは最上階……二五階の社長室に居ます!』

「待ち構えている、ということね……!」

『同フロアにはあのヒトの……ミリア・ウェインライトの姿もあります。お二人とも、十分に気を付けてください!』

「分かってるわ! 憐、貴方もしっかりサポートをお願い!」

「僕らの命運を握っている、といっても過言ではない重要な役割ですからね。頼みましたよ、憐くん!!」

 煙幕に紛れて一階エントランスホールを脱出した二人は、そのまま交戦しつつ非常階段を上へ上へと駆け昇っていた。

 インカムから聞こえる憐の報告に応答を返しながら、レイラは上から来る敵兵に向かってHK416を、レナードは下からの追っ手に対してミニミ軽機関銃をブッ放して応戦する。

 ――――エディ・フォーサイスは、最上階の社長室で待ち構えている。

 ある意味では予想の範囲内だ。

 あの男が過剰なまでの自信家だというのは、写真で見ただけでも十分に分かる。まして彼の手には、ミリアという……十二番目のペイルライダーという絶大な戦力まであるのだ。この万事整った盛大な歓迎っぷりといい、逃げも隠れもしないスタンスといい……エディ・フォーサイスは、最初から敢えてレイラたちをこの本社ビルで迎撃するつもりだったのだろう。

 ということは……結果的に、奴の誘いにまんまと乗ってしまったことになるか。

 (しゃく)な話だが、しかし突破できないことはない。

 それに……折角招待してくれたのなら、それに応じるべきだろう。この豪華絢爛なパーティの主催はレイラたち二人、メインディッシュは……奴の、エディ・フォーサイスの首だ。

「レイラさん、弾切れです!!」

「フォローするから、その間に早くリロードなさい!!」

 階段を駆け昇りながら、上と下の両方と交戦していた二人。

 だが、タイミング悪くレナードのミニミ軽機関銃が弾を切らしてしまった。

 仕方なしに二人は非常階段の踊り場で立ち止まると、レイラが隙をカヴァーする中……膝立ちになって、レナードは手早く再装填作業を始める。

「早くなさい!」

「待ってください、もう少し……!」

 上から駆け降りてくる五人ばかしの一団と、下から追ってくる十数人規模の私兵連中。

 そんな上下から挟まれた状況下、レイラは構えたHK416の照準を上へ下へと忙しなく動かしながら、たった一人で防ぎ続ける。

 そうしてレイラが必死に時間を稼ぐ中――レナードは素早く手を動かしていた。

 空になった弾薬箱をミニミ軽機関銃から外して放り捨て、代わりに新しい弾薬箱を……ポーチで携行していたものをガチッと機関銃の下側に装着。

 それから上部のフィードカヴァーを開け、弾薬箱の隙間からベルトリンクで帯状に繋がった弾を引っ張り出し、作動部にセット。フィードカヴァーを叩いて元に戻すと、右側のコッキング・ハンドルを引いてボルトを後退位置にセットし、再装填完了。

「大丈夫です!」

「よし……! レナード、貴方が前に立ちなさい!!」

「分かりました!」

 ミニミの再装填が終わると、レイラは即座に彼と交代。機関銃のパワーに任せて盛大に撃ちまくるレナードを先頭に階段をまた昇り始めると、待ち構えていた連中を一気に蹴散らして上へ、上へと駆け昇っていく。

『お前ら、とりあえず非常階段からは離れた方が良さそうだ』

 そうして二人で非常階段を駆け昇っていると、インカムから聞こえてきたのは憐の声ではなく、何故か鏑木の声だった。

 一応、彼には不測の事態に備えてバンに残り、憐の傍に居て貰っている。きっと横から憐のモニタを覗き込んだのだろう。そんな彼からの指示に、レイラは「急にどうしたの?」と疑問符を浮かべて言う。

 すると鏑木は『上も下も、徐々にだが追い詰められてるぜ。一気に本丸まで攻め込みたい気持ちは分かるが、そろそろ退き際だ』と、冷静な口調で諭すように返す。

 それにレイラは「分かったわ」と返し、レナードの方に振り返って彼と頷き合う。

 そうして互いに意志を確認し合うと、レイラは一番手近な位置にあったドアに駆け寄り、適当なフロアにレナードとともに転がり込んでいった。

 ――――十二階フロア。

 非常階段を離れた二人は、偶然目に付いたそのフロアに転がり込んでいく。

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