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第十五章:レイラ・フェアフィールド/06

「――――これが、私の全てよ。貴方に知ってほしかったのは、これで全部」

 長い、長い昔話。レイラ・フェアフィールドの過去全てをさらけ出す、長い昔話。

 それが終わるまで、レイラはずっと憐を胸に抱き締めていて。長い過去の話が終わってしまえば、レイラは胸の中の彼にそっと囁きかける。

「……好きだったんですか、父さんのこと」

 そうすれば、レイラの柔らかな胸に顔を埋めたまま、憐はポツリと小さく呟く。

 するとレイラは「今となっては、何も分からないわ」と憐の頭をそっと撫でながら微笑みかけ、

「ただ……もしかしたら、そうだったのかも知れない」

 と、遠い目をしながら、続けてそう呟いていた。

「…………さっきの答えが、まだだったわね」

 そうして遠い目をしながら呟けば、レイラはまた胸に抱く憐の方に視線を戻し。彼に優しく微笑みかけながら、細い声でそっと囁く。

「私も……私も、貴方のことが好き。久城憐、貴方のことを愛している。私も同じ気持ちだった。出来ることなら、貴方とこの先もずっと一緒に居たい。恭弥が遺した、たった一人の貴方の、私の大切な貴方の……一番近くで、憐だけを守り続けたい」

 抱き締めながら打ち明けた、胸に秘めた想い。

 いつしか抱いていた、彼に対しての強すぎるほどの、重すぎるほどの想い。自分でも正体の分からなかったその気持ちを、レイラもまた憐に打ち明けることが出来ていた。

「……っ、良かった……レイラも、同じ気持ちだったんだ……」

 レイラが想いを打ち明けてしまえば、途端に感極まった憐はそのまま彼女の胸の中で泣き出してしまう。

 そんな彼の頭をレイラは優しく撫でながら、落ち着かせるように柔らかな手つきで、憐の藍色の髪をそっと撫でながら……静かな口調で、彼にこう言った。

「私は……これを、最後の仕事にするわ」

「レイラ、それって……」

「貴方を守り抜いて、私はスイーパーを引退する。その後は……貴方さえ良ければ、憐。ずっと私と一緒に居て欲しい。お金の心配なら必要ないわ、幾らでもあるから。だから……貴方は何もしなくていい。ただ私と一緒に、私の傍に居て欲しいの……駄目かしら?」

 そんなレイラの言葉に、憐は彼女の胸に抱き締められたまま、うんと小さく頷き返す。

 レイラは頷く彼の頭をそっと撫でながら、「……ありがとう」と微笑み。そのまま瞼を閉じると……静かに、眠りに落ちていく。胸の中に抱く憐とともに、穏やかな眠りの底へと落ちていく。

 …………その晩、レイラは今まで一度も味わったことが無いほどに深く、そして安らかな眠りを得られていた。ただ静かに、いつまでも続くような……そんな穏やかな眠りを、誰よりも大切な彼とともに。





(第十五章『レイラ・フェアフィールド』了)

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