第八章:宿命の姉妹/02
ミリアとの邂逅を経て、どうにか学院の敷地内を脱出したレイラと憐は、そのまま学院裏手の路地を走り。割とすぐ傍に停めてあった目的の車――鏑木が逃走の為に用意した車の元まで辿り着いていた。
鏑木が言った通り、銀色の日産・フーガ250GTだ。年式的には二〇一六年式ぐらいだろうか。
レイラは預かったスマートキーを使って遠隔で施錠を解除すると、憐とともにそのフーガに乗り込んでいく。
エンジンを始動させ、暖機の時間も待たぬままにオートマチックのギアをドライヴ位置へと叩き込み、アクセルを踏み込んで急発進。未だ銃声が鳴り響く、交戦状態の八城学院から猛スピードで遠ざかっていく。
「どうにか……なったわね」
そうして学院から離れた後、公道を走りながら……フーガのステアリングを片手で握りつつ、レイラはやっとこさ一息つくことが出来ていた。
「……学院の皆は、大丈夫でしょうか」
そんな風にレイラが一息つく横で、助手席に座る憐は俯きながらそんなことを呟いていた。
端的に言えば、学院に人質として残された皆が心配なのだ。
幾ら周りと接点を持たない、言ってしまえば意図的にクラスメイトたちを避けている彼だとしても――やっぱり、思うところがあるのだ。
何せこの一連の襲撃自体、自分を狙ったものだというではないか。
それはつまり、自分のせいでこんな大事件が起きてしまったということに他ならない。犠牲者も幾らか出てしまっているほどの事件だ。幾らレイラが気にするな、と言っても……無理もない話だろう。
まして、憐はレイラの目から見てもかなり優しい心の持ち主だ。そんな彼が心を痛めないはずもない。
「…………大丈夫、鏑木たちがどうにかしてくれるわ」
だからこそ、レイラは気にするなとは言わず。ただ隣の彼の頭をそっと撫でながら、短くそれだけを彼に言っていた。
「それより、私たちは急ぎましょう」
「えっと、何処に?」
行き先に心当たりのない憐が首を傾げると、レイラは彼に「セーフハウスよ」と答える。
「万が一の時の為に、用意しておいた……言ってしまえば、隠れ家ね」




