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第七章:レーゾン・デートル/05

 ミリアの率いたリシアンサス・インターナショナル私兵部隊が静粛な内に学院への攻勢を始めようとしていた頃、レイラは職員室で事務作業に追われている真っ最中だった。

 今日は珍しく、一限目には彼女の受け持つ授業は無い。故にこうして職員室で面倒極まりない事務作業をこなしていたのだが――ある意味、それは幸運だった。

「…………っ!!」

 目の前の書類にペンを走らせている最中、レイラはその人間離れした感覚で敵の気配を……学院に忍び寄る襲撃者の気配を察知する。

(私の警告も……効果は無かったということね)

 内心で呟きながら、レイラはガタンと席を立つ。

 そうすれば、レイラは困惑する他の教師たちに目もくれず、そのまま全速力で職員室を飛び出していった。

 授業中が故に静かな廊下を全力疾走で駆け抜け、向かう先は憐が授業を受けている二年E組の教室。バァンっと音がするぐらいの勢いで力任せに教室の引き戸を開ければ、レイラはそのまま早足で教室の中に入っていく。

「……フェアフィールド先生、一体どうされました?」

 どうやら今は数学の授業中だったらしく、教壇に立つ老いた数学教師がきょとんとした目でレイラを見つめる。

 突然の彼女の来訪に、クラスの生徒たちも戸惑いの視線を彼女に向けていた。当然、その中には憐も含まれる。

 だがレイラはそんな皆の視線を一切気にしないまま、早足で憐の元まで歩くと……彼の手を掴んで引っ張り上げ、ただ一言「行くわよ!」とだけ言い、すぐさま彼を連れ出していってしまう。

「ちょっ……ちょっ、レイラ!?」

「説明は後よ!」

 状況がまるで掴めず、戸惑う憐を連れて廊下に飛び出すレイラ。

「フェアフィールド先生!? ちょっと、待って!」

 そんな彼女の背中を、教室から顔を出した数学教師が制止するが……しかしレイラはそれを振り切り、憐とともに廊下を走り抜ける。

「あの、ホントにどうしちゃったんですか!?」

 レイラに手を引かれるままに走りながら、未だ状況が理解できていない憐が困り果てた様子で問うてくる。

 そんな彼の方にチラリと横目の視線を投げかけつつ、至極シリアスな表情で……レイラは彼に、こう告げた。

「――――敵が、貴方を狙う連中が襲撃を仕掛けてきたのよ」

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