第七章:レーゾン・デートル/04
――――だが、事態はそう上手く運ばない。
そうして朝のホームルームが終わり、授業開始のチャイムとともに一限目の授業が始まった頃。八城学院の校門前には、何台ものバンが滑り込んで来ていた。
全てが黒で統一された、シボレー・エキスプレスのバンだ。
そこから降りてくるのは、先日セントラルタワーに現れたのと同じ、完全武装で身を固めた黒ずくめの私兵たち。黒い目出し帽で顔を隠し、各々ライフルなどの銃火器で武装した格好で、次々にバンから降りてくるのは――リシアンサス・インターナショナルの私兵部隊だ。
すると、そんな中に一人だけ私服姿の乙女の姿があった。
長いポニーテールに結った金髪の髪を靡かせる彼女は――ミリア・ウェインライトだ。車から降りた私兵部隊が彼女の周りに集っている辺り、どうやら彼女がこの連中の指揮役を担っているらしい。
「最終確認だ。作戦の目的はコイツを、久城憐を生きたまま確保すること。絶対に傷ひとつ付けるなって、マスターからの……社長からの厳命だ」
言いながら、ミリアは赤い革ジャケットの懐から取り出した憐の写真を、周りの連中にサッと見せつける。
「他の連中も極力は殺すな。必要なら撃っちまって構わねえが、出来るだけ人質にして体育館に集めろ。これもマスターからの命令だ」
ミリアの最終確認じみた言葉に、私兵部隊の連中は各々コクリと頷き合う。
そんな彼らを見回し、それぞれ一瞥すれば。ミリアもまた懐から愛用の自動拳銃、キンバー・カスタムTLEⅡを抜くと、それの銃把を右手に握り締めたままで皆にこう告げる。
「……ま、確認しなきゃならんのはこれぐらいだ。後は打ち合わせ通りにやってくれ。
――――状況開始」
命令を下すと、黒ずくめの私兵連中はそれぞれ割り振られた役目を果たすべく、あちこちに散開しつつ学院内に攻め入っていく。
そうして私兵部隊の連中が居なくなった頃、ミリアもまた愛銃片手にゆっくりと学院の方へと歩き出していった。
「…………待ってろ、すぐにアタシが会いに行く」




