第七章:レーゾン・デートル/03
そんな具合に新しい一日が始まり、私立八城学院は二年E組の教室。本鈴のチャイムとともに始まった朝のホームルームは、この激動の二日間と打って変わって平穏そのものだった。
教壇に立つスーツ姿のレイラと、それを窓際最後尾の席から見つめるブレザー制服の憐。
ぼうっと眺める憐の目に映るのは、あまりにも普段通りの光景だ。レイラは何事もなかったかのように、平常通りに淡々と担任の業務を続けている。
そんな、奇妙なぐらいに普段と変わらない光景。それを眺める憐はどうにも戸惑いの色を隠せていない。
それもそのはずだ。昨日に一昨日、現実離れした出来事が起き過ぎていたのだから。
レイラが実は自分を守るためにやって来た拳銃稼業のスイーパーで、彼女とともにセントラルタワーでの激戦を生き抜いて。そんな出来事ばかりが続いていたのだから……日常の光景に憐が戸惑ってしまうのも仕方のない話だった。
「――――とりあえず、皆に話しておくべきことはこれぐらいね。次は私の授業……じゃなかったわね。英語は確か四限目だったかしら」
憐がどうにも戸惑った顔で見つめてくる視線を肌で感じながら、しかし意図的に無視しつつレイラは担任業務を粛々と続けていく。
教壇に立ち、二年E組の生徒たちに淡々とした口調で必要事項を連絡していく、いつも通りの担任業務だ。
そんな一連の業務をこなしていく中、レイラはふと何気なく、こんなことを考えていた。
(…………このまま、何事もなく済めばいいのに)




