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第五章:Side Bets/03

 そうして新島オートでの物騒極まりない買い物を終え、二人で自宅まで戻ってくると。レイラは早速買ったばかりのスナイパーライフルをリビングルームのテーブルに広げ、真新しいライフルを改めて検分していた。

「……えっと、レイラ?」

 黙々と銃と、そして弾を弄るレイラの作業。

 そんな彼女の作業を、かれこれ一時間ぐらいじっと見つめていた憐だったが。ふとした折にレイラの仕草が気になって、思わず彼女に声をかけてしまっていた。

「何?」

「その……何をやっているんですか?」

「弾の選別作業、といったところかしら」

 レイラはさっきから、ライフル弾を紙箱から取り出しては先端を指先で撫で、計量器に置いて重さを測り、最後に弾をそっと指先に立ててみる……といった謎の作業を繰り返している。

 そんな彼女の仕草があんまりに奇妙だったものだから、憐はそれが不思議でたまらなかったのだ。

 それに対するレイラの答えが、弾の選別作業という一言だった。

「本当なら自分から一で作った弾が一番なのだけれど、残念ながら今はそこまで時間的余裕はないの。だから、こうしてひとつずつ確かめているのよ」

 と、いうことらしい。

 レイラが今日、レミントンM24‐SWSとともに新島から調達した大口径ライフル弾、NATO規格の七・六二×五一ミリ弾。仮にも狙撃用のマッチグレード規格の弾であるから、精度の方は十分であるはずだ。

 だが、レイラはその高精度マッチグレード弾から、更に選りすぐっていたのだ。より精度が高く、正確に飛んでくれるであろう一発を。

「こうして計量器でデジタル的に数字を測るのも大事よ。でも……やっぱり、最後に重要なのは感覚なの。私の場合は、他人よりずっと感覚が鋭いから特に、だけれど……最後にはこうして、実際に触って確かめるのが一番正確なの」

 言いながら、レイラは選りすぐった五発をM24の弾倉、固定式のインナーマガジンに一発ずつパチンパチンと込めていく。

 本命は一発のみ、残り四発はあくまで不測の事態に備えた予備だ。この中の一発さえあれば、厳選した一発さえあれば……此度の狙撃には、事足りる。

(……やっぱり、レイラって凄いヒトなんだよね)

 弾を選別し、それをライフルに込めるレイラ。

 そんな彼女の作業を背中越しに見つめながら、憐は彼女が只者ではないことを……そして、そんな彼女の師匠であったという自分の父親が。秋月恭弥がどんな人物だったかを、改めて認識し直していた。

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