第四章:Guardian Angel/07
「――――待たせたわね。憐、お風呂空いたわよ」
「ちょ……っ!? れ、れれれレイラっ!?」
そうしてバスルームから出てきたレイラがリビングルームに戻ってくると、そんな彼女を……仄かに湯気の立つ、肌を上気させた彼女を目の当たりにした憐が顔を真っ赤にしてしどろもどろになる。
それもそのはず、今のレイラ――――端的に言ってしまえば、格好はバスタオル一枚だ。
高身長な上に、ただでさえ凄まじいプロポーションな彼女が……今はバスタオルたった一枚だけを身体に巻き付けた格好。真っ青な髪は水気を含み、身体からは仄かな湯気を立てる、そんな今のレイラは――憐の瞳には、さぞ魅力的で刺激的に映ったことだろう。
故に、憐の反応もさもありなん。寧ろバスタオルを巻いてくれていただけ、まだレイラに理性があって良かったというべきだろう。もし仮に、これがバスタオルすらない格好……即ち何も身に纏わぬ格好であったとしたら、憐は今頃鼻血を吹き出して卒倒していたに違いない。
――――何にせよ、風呂上がりのレイラはそんな大変刺激的な出で立ちで憐の前に現れていたのだ。
「? 何をしているの、次は貴方の番よ?」
だがレイラは憐がそんな風に顔を真っ赤にして慌てる理由が分からないようで、素できょとんとしながら平然と彼にそう言う。
そうした後で、今度は鏑木の方に視線を流し。するとレイラは「着替えは……貴方が持ってきているんでしょうね」と見透かしたように言う。
「へっへっへ、分かってんじゃねえか」
とすると、鏑木はニヤリとしながら、持ってきていた紙袋を彼女に見せつけた。
「此処に来る前、久城本家にちょいと寄ってな。坊主の着替えやら諸々を預かってきたんだ。それと……本家の方には俺からもう話を通してあるから安心しな。やれ家出だ、やれ遅れてやって来た反抗期だって、家の連中が騒ぐ心配は無いぜ」
「あ、はい。ありがとうございます……?」
尚も顔を赤くしつつも、きょとんとしながらひとまず鏑木に礼を言う憐。
そんな彼を一瞥しつつ、鏑木はレイラの方に視線を流すと……小さく肩を揺らしながら、彼女に「それよか、さっさと着替えて来いよ」と諭すように言う。
「おじさんは一向に構わねえんだが、なんつーの? 年頃の少年にはよ、お前の身体……チョイとばかし目に毒だぜ?」
「そうかしら?」
鏑木に言われ、またもきょとんと首を傾げるレイラ。
頭の上に疑問符を浮かべながら、レイラは傍らの憐に視線を流してみるが……そんな彼女と目が合ったのも一瞬、照れた憐は思わずぷいっと視線を逸らしてしまう。当然、顔は信号機かってぐらいに真っ赤だ。
「おいおい……」
目を逸らす憐と、首を傾げるレイラ。そんな二人の――というより、主にレイラの様子を見て、鏑木は呆れたように溜息をつく。
「相変わらず直ってねえな、お前さんのそういうトコよ……」
完全に呆れ返った顔で呟き、やれやれと肩を竦めながら……鏑木は二人にこう言う。
「とにかく、レイラは着替えてこい。坊主は坊主で、とっとと風呂入ってきな」




