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第三章:キルボックス・ヒル/04

「ふっ――――!」

 スライディング気味に曲がり角から飛び出したレイラが、廊下の床を滑りながらF2000を発砲する。

 フルオート(連射)での連続射撃だ。そんな滑り込みながらの不意打ちで、レイラは六人の敵の内の二人を一気に始末することが出来ていた。

「居たぞ!」

「散れ、散れッ!!」

 そうしてレイラからの不意打ちを受ければ、残った四人は即座に散開。廊下の曲がり角や柱の出っ張りなんかに隠れ、彼女の様子を窺う。

 レイラはそのまま十字路の反対側に滑り込み、角から半身を出しつつF2000で牽制射撃。残弾が尽きるまで撃ち続け、敵の動きを制してやる。

「よし……!」

 そうした牽制射撃で敵の動きを封じれば、レイラは丁度弾の切れたF2000を一旦床に投げ捨て、懐から愛用のアークライトを抜く。

 角から身を乗り出しながら、片手で構えたアークライト。その銃口の先に敵の姿はない。

 だが――――これでいい。

「この角度なら……当ててみせるわ」

 呟き、レイラは引鉄を絞った。

 ズドンと銃声が轟けば、閃光とともに撃ち出された三八スーパー弾は空を切り……そのまま壁に激突。

 すると、甲高い音を立てて弾は跳ね返り――――そのまま、レイラの死角に隠れていた兵士の側頭部へと叩き込まれた。

「ウグゥ……ッ」

 断末魔の唸り声を上げながら、レイラの一撃を喰らった兵がバタンと倒れる。

 そのままレイラは続けざまに二発、三発と撃ち……やはり壁に命中させると、跳ね返った弾で以て隠れる兵士たち全てを見事に撃破してしまった。

「レイラ、凄い……」

 そんな彼女の人間離れした戦い方を目の当たりにして、憐はうわ言のように呟く。

 ――――跳弾で仕留めるなんてこと、普通は不可能だ。

 それぐらいは、ズブの素人である憐にだって分かる。壁に激突して跳ね返った弾が何処に向かうかなんて、普通は予測不可能だし……ましてそれを利用し、狙って敵に当てるなんてことは不可能だ。

 だが、レイラはそれを見事にやってのけた。

 まさに神業としか言えない、人間離れした芸当だ。それを目の当たりにしたからこそ、憐は呟き……そして、彼女が本物であることを改めて認識する。レイラ・フェアフィールドが自分を守るためにやって来た――恐ろしいほどに強い、拳銃使い(ガンスリンガー)であることを。

「行くわよ」

 そんな風に憐が呟いている間にも、全ての敵兵を始末し終えたレイラはアークライトを懐に戻していて。拾い上げたF2000の弾倉交換をしながら、彼女は淡々とした口調で憐にそう言う。

 そのまま先に歩いて行ってしまう彼女に、憐は「はっ、はい!」と言って頷き、小走りで彼女の後を追った。

「……?」

 だが……憐は何かを踏んづけてしまい、思わず立ち止まってそれを見下ろした。

「これって……」

 そこに落ちていたのは、一挺の拳銃だった。

 恐らくはレイラが倒した兵士たちの持ち物だったのだろう。回転式……リヴォルヴァー拳銃という奴だろうか。

 厳密に言えば、それはキンバー・K6S。撃鉄内蔵型のダブル・アクション・オンリーで、手のひらサイズのボディから強力な三五七マグナム弾を六連発で撃ち放つ、小型のリヴォルヴァー拳銃なのだが……そんなことを、素人である憐がまさか知るはずもない。

 憐は足元に落ちている、そんな銀色の小型リヴォルヴァーに目を奪われてしまう。

「…………」

 転がるそれを見つめながら、ゴクリと唾をのむと。すると憐は何を思ったか、思わずそのK6Sを拾い上げてしまった。

「何やってるの、急ぐわよ」

「はっ、はい……!」

 そうした頃、憐が付いてこないのを不審に思ったレイラが立ち止まり、振り返って彼を急かす。

 それに憐は頷きながら、慌ててその拳銃をパーカーのポケットに仕舞いつつ……小走りで彼女の後を追った。

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