表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/101

第三章:キルボックス・ヒル/01

 第三章:キルボックス・ヒル



 ――――数分前。

 展望台のレイラが異様な気配を察知するより僅か数分前、このセントラルタワーに謎の一団が雪崩れ込んでいた。

 地下駐車場に滑り込んできたのは、数台の黒いシボレー・エキスプレスのバン。そこから降りてくるのは、黒ずくめの戦闘服で身を固めた――重武装の一団だ。

 上下ともに黒一色で統一した戦闘服に、胸には防弾プレートキャリア、頭には最新鋭のFAST戦闘ヘルメット。顔は黒い目出し帽(バラクラバ)で覆っていて、人相は伺い知れない。だが僅かに覗く目元から、多種多様な人種で構成された連中ということだけはわかる。

 そんな彼らの手には、自動ライフルやサブ・マシーンガンなどの物々しい銃火器類が握られている。当然ながら玩具なんかではない本物だ。この国で普通に暮らしていく上では、まず滅多に見かけない銃火器。それらを手にした重武装の一団が、何の脈絡もなくこのセントラルタワーに現れていたのだ。

 ――――兵士。

 重武装で身を固めた黒ずくめの彼らは、テロリストというよりも寧ろ兵士のような風貌だった。

 精強にして静粛、その無駄のない動きは明らかに訓練された者のそれだ。特殊部隊とまではいかないものの、その動きはまるで先進国軍の正規兵のようだった。

 実際、彼らはある組織に雇われた私兵部隊だった。

 そんな彼らは地下駐車場にバンで乗り付けると、ハンドサインで意志を交わし合った後、散開。素早く無駄のない動きでタワーのあちこちに浸透すると、瞬く間にこのセントラルタワーを支配下に置いてしまった。

 警備員たちが詰める警備室に飛び込み、手にしていたサブ・マシーンガンを使って警備員を射殺。タワーの警備システムを掌握した後、表のフロアにも雪崩れ込み……すぐさま出入り口を封鎖。パニックに陥る客たちを黙らせると、すぐに一か所へと集める。

 まさに疾風迅雷、これぞ電撃作戦だ。

 そんな電撃的な素早さでビルに雪崩れ込んだ私兵部隊は、僅か数分の内に高層ビジネス棟と低層商業棟の二つ、このセントラルタワーの地下五階から四八階までのほぼ全域を……静粛なままに、我がものとしていた。

 あまりに素早い動きであったが故に、警察はおろか、ビルの外を行き交う人々ですらセントラルタワーの非常事態には未だ気が付いていない。彼らはビルの運営スタッフとオフィスの職員、そして訪れていた観光客の計数百人を人質に取りながら、しかしその異変を未だ外部に悟られていなかったのだ。

 見事としか言いようがない手際で、この電撃的な占拠を成功させた彼らの目的は――決してテロリズム的なものではなく。彼らの目的はただ一人の少年、その身柄を確保することだけだった。その為だけに、この大それた襲撃を敢行したのだ。

「――――発見しました」

「やはり護衛が付いているか……よし、すぐに確保しろ。ターゲットの捕縛が完了次第、速やかに撤収する」

 そして、ビルの警備室。そこで監視カメラの映像をじっと見つめていた面々が、遂にその少年――――久城憐に狙いを定めていた。

 この騒動自体が、この大規模な襲撃自体が、全てその少年一人を狙ったものだったとは……人質にされた者たち、数百人の内の誰一人として知らぬことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ