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第二章:気になる彼女と、近づく互いの心と/06

「凄かったですね、この映画!」

「気に入ってくれたのなら何よりだわ。前のシリーズもDVD持っているけれど、今度貸してあげましょうか?」

「ホントですか!? わあ、楽しみだ……!」

「それと、例の高速道路のシーン。なんでも映画の撮影の為にわざわざ高速道路そのものを作ったらしいわ」

「……規模が桁違い過ぎません?」

「それぐらいに人気のシリーズなのよ。彼の車……デイトナ仕様のダッジ・チャージャーも、映画の撮影用に新しく作った個体だそうよ。本物は貴重過ぎて壊せないから」

「凄いですね……」

「気に入ったのなら、今度DVD貸してあげるわ」

 そうして映画を観終わった後、スクリーンから出てきた二人は、そんな風に映画の感想を言い合いながら……主に興奮した憐と交わしながら、二人揃って映画館を後にしていた。

 で、そんな風に映画館を出た後。レイラは憐を連れて隣の高層ビジネス棟に移り、高速エレヴェーターに乗り込むと……今度は四五階、高級レストランフロアに彼を(いざな)った。

 丁度良い具合の時間だから、この辺りで昼食と洒落込もうということだ。

「予約はしていないけれど……入れそうね」

「えっと……ホントに入るんですか?」

「心配しなくても、お代は私が持つから大丈夫よ」

「そうじゃなくて……っていうか、悪いですよ! 映画まで奢って貰ったのに、こんな高そうなお店でご馳走になっちゃうなんて……流石に、レイラに悪いです」

 目ぼしいレストランを見つけ、早速入ろうとしたレイラだったが……しかし憐はそんな風に遠慮がちな様子。

 彼としては、映画代まで奢って貰った上に昼食まで、しかもこんな高そうな店でご馳走になってしまうのは流石に申し訳ないということらしい。気持ちは理解できる。

 理解出来るが……しかし、ここで引いてしまえばレイラ・フェアフィールドじゃない。

「いいから、行きましょう?」

 レイラはそう言うと、彼を強引に連れて行こうとする。

「で、でも……」

「今日はせっかくの休みに、貴方を付き合わせてしまった。これは私からの気持ちよ」

 続けてそんなことを言ってやれば、憐はまたさっきみたいに顔を赤くして。とすれば「そんな……僕も、嬉しかったです」と、恥ずかしそうにポツリと呟く。

「レイラに誘って貰えて、凄く嬉しかったし、今も凄く楽しいです。だから、そんなお礼なんて……」

 そんな彼の初心というか、遠慮がちな……ある意味で彼らしい反応。

 それを見て、レイラは僅かに表情を緩ませると。すると少しかがんで、憐と……自分よりも背の低い彼と目線の高さを合わせ、微笑みながら憐にこう言った。

「だったら尚更のこと、楽しみましょう?」

 レイラは微笑みながらそう言うと、憐の手を取って歩き出し。結局、何だかんだと言いくるめて彼を目の前の高級レストランに連れて込んでしまった。

 最後まで憐は遠慮気味だったし、入った後もしどろもどろとしていたが……でも、何だかんだと楽しそうで。そんな憐の顔を見ていたレイラも、不思議と楽しい気分になれていた。

 その日の昼食は――――彼女が今まで味わったこともないぐらい、美味しかった。

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