表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/101

第二章:気になる彼女と、近づく互いの心と/02

 そんなこんなで、翌日の午前十時頃。土曜日の今日、休日のこの日……久城憐は待ち合わせ場所の公園、噴水前の広場でじっと誰かを待ち望んでいた。

 憐の格好は平日だった昨日までとは打って変わって、黒のTシャツと紺色のパーカー、下はジーンズといった私服姿。そんな格好で憐は、何やら落ち着かない様子で誰かをずっと待っていた。

「――――憐」

「はっ、はいっ!」

 そんな彼は何処からか聴き慣れた声に呼びかけられ、緊張のあまり思わず声を上擦らせながらバッと振り返る。

 振り返った先、彼の前に立っていたのは――他でもない彼女、レイラ・フェアフィールドだった。

「待たせたかしら?」

 普段通りのクールな調子で言う彼女に「い、いえっ!」と、憐はまたも声を上擦らせながら返す。

 そんな憐の前に現れたレイラは、彼と同様に私服姿だった。

 普段の彼女のトレードマークじみた格好だ。白のキャミソールに、肘下で袖を折った黒いジャケットを上から羽織り。下はデニム地のショートパンツに黒のニーハイソックスと、焦げ茶のハイカットブーツ。左手首にはロレックス・サブマリーナの腕時計といった感じ。

 レイラがそんな格好で――――学院で見るスーツ姿とはまた違った印象の格好で現れたものだから、見とれてしまった憐は思わずこんな初心(うぶ)な反応をしてしまった、というワケだ。

「じゃあ、行きましょうか」

 憐のそんな反応にレイラは微かに笑むと、彼を連れて歩き出す。

 先を歩くレイラの後を慌てて追いかけながら、憐は――そういえば、肝心の何処へ行くのかを聞いていなかった彼は「えっと、今日は何処へ?」と今更な質問をレイラに投げかけた。

 すると、レイラは「色々よ」といつも通りの調子で、ある意味で素っ気なくも聞こえる調子で返す。

「でも、フェアフィールド先生……」

「――――レイラ」

「えっ?」

「今は私をそう呼びなさい。呼び捨てで構わないから」

「でっ、でも……」

 突然言われても、どうしたら良いのか分からない。

 今日は休日といえ、一応この二人の関係は教師と生徒だ。言ってしまえば目上と目下の関係、そんな間柄で突然名前で呼べと、しかも呼び捨てで構わないと言われてしまえば……優等生な憐としては、戸惑うことしか出来ない。

 レイラはそんな彼の遠慮がちな反応から察すれば、次にこんなことを彼に言う。

「今日は教師と生徒の関係じゃない、あくまでプライベートよ。今ぐらいはそうやって呼んで欲しいわ。それとも……嫌だったかしら?」

 ――――ある意味、ズルい言い方だ。

 とはいえ、そんな言い方をされてしまうと、イエスと首を縦に振らない選択肢は消えるのが必定。

 故に憐は「いっ、いえっ!」と首を横に振った後、

「じゃ、じゃあ……レイラ、さん」

 と、緊張した面持ちで、恐る恐る彼女の名を呼んでみた。

「さんは要らない。貴方と私、別に大して歳も離れているワケじゃないもの」

「えっと……じゃあ、その、レイラ?」

「何かしら、憐?」

「これから僕を……何処に、連れて行くんですか?」

 恐る恐る彼女の名を呼びながら、もう一度同じ質問を投げかける憐。

 レイラはそんな彼の隣を歩きながら、横目の視線でそっと彼を見下ろし……小さく微笑みながら、こんな答えを返していた。

「そうね……言うなれば、気晴らしのお散歩といったところかしら」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ