表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

旅の終わりに

作者: ヌベール



結婚して間もなくの頃、妻と伊豆を旅行して、3泊4日ほどの旅の最後に湯ヶ島温泉に泊まった。


湯ヶ島とは、丁度伊豆半島の中程にある山あいの温泉地で、作家井上靖の故郷でもある。


そのほかにも、川端康成や尾崎士郎、梶井基次郎など多くの文人に愛された。


こう書くとちょっと派手な印象を受けるかもしれないが、清流を挟んで両岸に旅館の立ち並ぶ温泉地は実に静かで、いつ行っても俗化することのない、心安まるる美しい温泉だった。


以前伊豆の湯ヶ野温泉について書いたが、その湯ヶ野とも違う、「湯ヶ島」である。

 

私はそれまでに2、3度訪れたことはあったが、妻は初めてであった。


風呂に入り、夕食にイノシシ鍋をいただいて、あたたまった。


私は若い時は旅行が好きで、度々地方に行ったが、やはり何と言っても伊豆は1番のお気に入りだった。


特にこの湯ヶ島などは、その素朴な味わい、静謐な佇まいなど、実に気に入っていて、妻も、その風情には納得した様子だった。


この湯ヶ島の人々の生活は、井上靖の自伝的小説「しろばんば」に詳しく描かれているが、しかし時を経て、文学も様変わりした。

人々の心も様変わりした。


大抵の若い人は、こんな鄙びた温泉より、同じ金を出すならたとえばディズニー・ランドの方がいいに決まっている。


そういうわけで、今はこの湯ヶ島も、人気がなく、すっかり寂れたそうだ。

さらにコロナがとどめを刺すかもしれない。


時代は変わる。

私も変わらなければならないだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 南伊豆には行ったことがありますが、湯ヶ島は通り過ぎただけでした。 ちょっと行ってみたいな、と思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ