別れと新たな出会い
リースがジュウラの残した果実を拾い上げた。
「多分これは君のためにジュウラ様が残したのだと思うよ」
そう言って果実を俺に渡してきた。
「ジュウラ様が言っていた通り力の暴走だけは気を付けてね。南に行けば人間達が暮らしているはずだから、そこに向かうといいよ」
「リース、ありがとうな。達者でな」
俺は涙をこらえながら言った。
「ありがとう。ジュウラ様の願いを叶えてくれて」
そして俺は南に向かって歩きだした。
初めよりも足の進みが遅い。
俺はまだ少しだけ後悔していた。
夜、リースが言っていたと思われる所に着いた。
しかし、入り口がなかった。
その場所は石の壁に囲われていて、まるで要塞の様だった。
「しっかし何処から入ればいいんだ」
と石の壁の周りを回っていると首の横に何かが向けられていた。
その物は月明かりに照らされて正体がわかった。
剣だ。
「お前、何処のギルドの者だ」
剣を向けていると思われる男が問い詰めてきた。
しかし、俺はこの世界のことをあまり知らないのでギルドが何のことか分からなかった。
「すみません。ギルドって何ですか?」
「お前、ギルドの意味も分からないのか」
「すみません。あまりこの世界のことが分からないです」
「わかった。なら何処の地方の出身だ」
「日本です」
「ニホン?聞いたことのない地名だな。ステータスプレートは持っているか?それで身元がある程度分かるから出してくれ。流石にステータスプレートぐらい持ってるだろう」
「ステータスプレート?そんなもの持ってないです」
「なら逆に君は何を持っているんだい」
俺の首もとに剣を向けていた男は呆れた声で言った。
「この果実だけです」
と言いながらリースにもらった果実を男に見せた。
すると男は目を見開いて果実を見ていた。
「お前、これをどこで手に入れた」
「お礼として妖精にもらった。これってレアな物なのか?」
「当たり前だろ、これはエントが死んだ時に出来る果実だ。まずエント自体の遭遇率は低くく、その上エントの力は強く普通の人間じゃ何万人集まっても勝てないと言われているんだぜ。そしてものすごくうまいことで有名なんだ。それを譲ってくれないか。ギルド内での待遇をよくするからさぁ、頼むよ」
俺は迷った。
ジュウラの形見みたいな物を渡していいのか。
しかし、これが本当に貴重な物なら殺してまで奪ってくるかも知れない。
どうすればいいか…
『お主自らのためになる道を選べばいいのじゃよ。そのために私は果実を置いていった…』
声が聞こえた。
ジュウラの声だ。
自らのためになる道を選べと言った。
なら…
「これを渡そう。代わりに色々と教えてくれ」
「いいだろう。その前に長にお前を会わせなくてはいけないから付いてこい」
本当にこれで良かったのだろうか。
俺はそう考えた。
しかし、後悔はしてももう遅い。
俺はジュウラに助けてもらったと考えるようにした。
そんなことを考えていたら男が隠し通路を開けていた。
「ほら、いくぞ」
俺は男に付いていった。