第三話 盗み聞きはしないのが一番いい?
放課後。
と語ろうと思ったが、放課後はとくに話すこともない。リア充、モブ、孤立組関係なく部活に行く。まあ、帰宅組もいるんだけど、それはわずかの人たちであり、大抵の人は部活に励む。
ほら、特に語ることもないだろう。
俺は図書委員であり、放課後は図書室で本の貸し出しのためにパソコンの前で座っている。たまに来る人はテスト期間中にちらほらと。
なぜ、俺が図書委員をやっているかというと、始業式の後、ホームルームで決めるはずだった係決めでずっと本を読んでいたからだ。
たまにいるだろう? ホームルームなのに教師の話を聞かないで本読むやつ。それが俺だ。
そのせいで余っていて図書委員というめいどくさい仕事を押し付けられたわけだが、自業自得すぎて文句も言えず図書委員をやり続けている。
しかも、委員会集会で集まったとき図書の貸し出しの当番について決める話し合いでは、委員長のお偉い言葉のせいで俺が週四で俺が放課後の当番になってしまった。
なにが「この中で部活やってない人はいる?」だ。部活やってないだけで、暇だと決めつけないで欲しい。
それでは、家に帰ったら本を読んでくつろぐというルーティーンがこなせないではないか。
それって暇だな。しかも図書室で出来るじゃん。俺適任じゃん。
という感じで図書委員をやってる今日この頃のわけだが、今日は珍しく人が来ている。しかも二人も。テスト期間中ではないのでほんと珍しい。
だからといって、俺がなにをするわけでもないんだが。
二人は俺が本のしおりを落とし拾っている間に来ていたっぽく。そのまま二メートルぐらいはある本棚が入り組む道を進み奥の机に向かったのだろう。今は俺が座っている机から少しだけ制服の端が見える。
何やら楽しく話している様子で少し会話も聞こえてくる。
俺は図書室は静かにとかいうタイプではないんだが、いや図書委員だから言わなきゃいけないんだけど……。
じゃなくて会話も女子だけ、男子だけならいいんだが、あろうことか男女でそこにいるらしく。さっきも言ったように楽しげに会話している。
そりゃ当然腹が立つよね。俺だけじゃないよね? リア充、バルスって思うよね?
まあ、だからって何するわけでもないんだけどさ……。
俺は少しだけ気にしたが本を読むのに集中した。全然内容入ってこないんだけどね。
そうすると、十分後ぐらいに会話が終わりそろそろ帰るのかなと思い始めた頃。事件は起こった。
こう言うとなんかカッコいいよね。ってそんなこと悠長にいってる場合でもなく、関わったらめんどくさそうなことを聞いてしまったのだ。それは、、、
「私、、、爽くんのことが、、、好きなの! だから付き合ってください!」
あー、昼に話してた美咲っていう女子だ。俺無理って言ったよな、心のなかだけど。絶対無理だって白狼って言えば女子と付き合わない宣言してるの有名だぞ。だから、白狼のグループの女子たちも手を出さないじゃないか。
いや、でも昼休みに俺もしかしてフラグたてて……。
「いいよ、僕も美咲ちゃんの事いいなって思ってたから。」
あー、やっぱり建ててたかー。誠也といいフラグ回収お疲れ様だねー。
「だけど、僕たちが付き合ってるのは内緒でね。僕のこと好きな人が美咲ちゃんに何するか分からないからね。もし何かあっても僕が守るから。」
いやー、絶対って無いんだよ。織田信長も言ってたもん。「絶対は絶対にない」って。
いや、どっちだよ。というベタなツッコミはおいといて、ヤバイこと聞いちゃったよ。あの二人は俺がいないと思ってそんなこと言ったんだよな。
それって、俺が居るってばれたら……。
コツコツ。二人の靴音がこちらに向かってくる。ヤバイよ、ヤバイよ。あ、人ってリアルにヤバくなるとあの人になるんだな。
て、そんなこといってる場合じゃ……?
手を繋いでいる二人が俺の視界に入ってしまった。なのに、なんも反応なしなのは何でですかね。
あのー、イチャイチャするのはいいんだけど俺いるの気づいてるよね? わざと気づかないふりしてるんだよね?
まさかとは思うけど、孤立している空気の俺には聞かれても問題ないとか思ってないよね。 そうなんですね。
そのまま、ほんとに何事もなく二人は図書室を出ていってしまった。小規模な爆弾を落として。まあ、俺には特に問題が降りかかってないみたい?だし、とりあえずそろそろと。
コンコンと扉の音が鳴った。
「今いくよ。」
「早く帰ろー。」
目の前のパソコンには五時五十五分の時間が記されていた。この学校の最終下校時間は六時であり、みなが来る時間はだいたいその五分前だ。
パソコンの電源を消し、すぐに机に置いてある小説を鞄に入れると俺は図書室の扉へ向かった。
「わざわざごめんね。迷惑かけたくはなかったんだけど。」
校門に向かう俺たちは、みなの弱々しい口調から会話が始まった。
「いいって、気にすんなよ。それに俺あれだし。」
「ちょーぜつ暇人?」
「いや、そうなんだけどさ、そんなストレートに言わなくてもいいじゃんか。」
みなにはオブラートという言葉を覚えてもらいたい。
「いやー、たっくんは冗談だって思った方がいいよ。メンタル的に。」
「いや、もうそれ言っちゃってるからね。俺が暇人だって。」
「え? 違うの?」
違うわ! と言えるわけもなく、俺は数秒考えて。
「み、みなのことを思って暇人になってあげるてるだけだって。」
「え、、わ、私のことを思って、、、」
顔を赤くしたみなは手で顔を隠しているようだ。
「また、お前らはイチャついてんのかよ。」
あきれた顔で校門に寄りかかっている男は誠也だった。
「「イチャついてない!!」」