第二話 面倒事は関わらないのが一番いい
昼休み。
クラスである程度固まってたグループごとに食べる弁当は仲の良いやつら同士なら美味しいだろう。
リア充グループならなおさら話も盛り上がりゆっくり時間をかけて弁当を食べるため、教室の雰囲気の良い状態を長く保ってくれる。
だが、モブがたくさんいるグループには面倒い事が待ち受けている。それは、いつも孤立してるやつらが椅子を持って輪の中に入ろうとしてくるのだ。
ここで、モブと孤立君たちの立ち位置を考えてみよう。
モブは可でもなく不可でもない何の個性がない、他人に同調することだけが出来るやつらである。
一方、孤立君たちは、とにかく個性が強い。リア充たちも個性が強いが、それは部活やらコミュ力、趣味に向ける良い方向への個だ。
だが、孤立君たちは孤立しているだけあり、人との会話も少なく部活もやってないなど、ベクトルが逆方向に強いのである。
そのくせ、強烈なキャラも備わっており、それはモブには突破出来ない難攻不落の城塞のように攻略しづらいのだ。
リア充ならいとも簡単にぶっ壊してしまうんだけど。
なので、リア充からみたモブも孤立君も扱いやすさの違い程度にしか変わりがないが、モブだけのなかでは違う。
やはり、モブだけあって強調力はずば抜けている。であるから、孤立君による反対意見などの不純物をとにかく嫌うのである。
それはリア充やモブが持っている人脈などの武器のない孤立君にはヘイトが向けられるのである。
つまり、無視だ。
よって、モブの中としては孤立は悪、リア充は正義。
もちろん自分達は正義つまりリア充の味方であり、孤立組を嘲笑う。
そこに関して俺はモブという存在に嫌悪感を抱いてしまうがそれが一番生きやすいやり方なのだろう。
リア充ほど失敗すれば孤立組に行きやすいものはないのにな。
俺の昼休みは太一と一緒に弁当を食べるため孤立にならず、面倒事にも関わらないため楽でいい。だが、しかし。
「太一、今日もサッカー部昼練だから先食べてて。」
「うぇーん、うぇーん。」
こういう日もある。しかたないから、俺は七三分けにしながら朝にやられたメンヘラ彼女を演じてみた。やられたらやり返す、八つ当たりだ。
「太一、泣く人は声ださないんだよ?」
あー、もうこいつ殴っていいよね。朝俺黙っててあげたの忘れたんだよね。うん、そうだよね。
「もういいよ、早く行ったら?」
朝の話を掘り返すのはやめて、俺の心の中に閉じ込めておいた。いやー、俺大人だなー。
「うん、あ。メンヘラだと女の子から嫌われちゃうよ。じゃね。」
「俺のコークスクリューが放たれる前に行け。」
「それ、放ったあとに言わないでもらえるかな?」
腹を押さえて突っ込んでくれる誠也は俺よりも大人だった。そのあとすぐ誠也はスパイクを持って教室を出ていった。
さてと、一人の時間を満喫しますか。
俺はよく一人になる。これだけ聞くとただの寂しいやつだな。まあ、確かに誠也はよくサッカー部と一緒にいるし、みなも女子に囲まれてるし。
俺他に話す人いな……。じゃなくてだな。これは戦略的行動であるのだ。
俺は誠也と弁当を食べているが今日のようにサッカー部の昼練やらミーティングやらで居ないときがあり、その時は弁当を食べたら机に突っ伏し寝たふりをする。
誠也は見た目の通り存在感があり、主人公感もある。つまりは俺は、誠也といるときは誠也と一緒にいる人と認識されるが居ないときは認識されないのである。
なので、存在すら認識されない俺は楽らく他人の話を聞けるのである。例えばクラスの人間関係や裏事情の話など。
まあ、だいたい「彼ピッピカッコいい」みたいな下らない話をするのがほとんどなんだけど……。
今日も早速……。これなんて言ったらいいの?盗み聞き、プライバシー侵害、人権侵害。情報公開法あるから別にいいよね……。うん、俺もどうやらベクトルが違うのかもしれない。もういい、俺の存在を認識しない君らが悪い。机にぶつかったときぐらい気付こうね。奇跡の世代の子にもさすがにぶつかったら気づくとおもうよ。
まあ、ともかく盗み聞きをしよう。もう俺は開き直ってやる。
俺の席から、斜め前で二人組の女子がいつも弁当を食べているためその子達から情報を聞くことが多い。
もちろん相手からは許諾を得ていないよ。
「ねぇ、私、、そうくんの事好きかもしれない!」
「えーやめときなよ。あのグループの女子たちみんな、そうくんのこと好きだなんだよ?」
へ~やっぱ白狼ってモテるんだ。
爽くん。本名は白狼爽。こんな、カッコいい名前してブサイクだったらダサいぞと言いたいが、名前の通りめちゃくちゃカッコいい。
毎日セット大変だろうな、と思うナチュラルな束感のツーブロックとそれにあってる整った顔つきは、見たものを惚れされる惚れ薬のようになっている。
おまけに、サッカー部のキャプテンで勉学は学年十位以内という恐ろしいこうスペックも備わっている。
いうなら、誠也が頭がよくなってイケメンということに自覚を持ってる感じだな。
「でも、誰も告白してないんでしょ? もしかしたらあるじゃん!」
「もー、いつもそれって決めたら、やめないじゃん。美咲の好きにしなよ。」
その二人はあきれた様子で友達と、もう一方はうきうきしながら作戦をねるためノートを取り出し始めた。
まあ、俺が思うにこの女の子が白狼と付き合うことはないと思うけどな。
その他にはこれといっていい情報もなくどっかに行ってしまったので、耳に着けていたワイヤレスのイヤホンにスイッチを入れ音楽を聴き始めた。まさに、用意周到な完全犯罪だ。
十分もしないうちに予鈴がなり、誠也が戻ってきた。そうしてすぐ、午後の授業が始まった。
やっぱり面倒事はないのが一番だな。