プロローグ
「私あなたの事が好きなの……。だから、付き合って…ね。」
高校二年生の春、俺は告白された。しかも黒髪ロングの清楚系美少女にだ。キリっとした目付きは他を寄せ付けない凛とした様子を少し高めの鼻に小さいながらも引きずり込まれそうになる唇、まさに高嶺の花だ。告白は高校生の誰にとっても嬉しいことなのではないだろうか。彼女がいたとしても、他に好きな人がいたとしても、女子から好かれることにこしたことはない。ちなみに去年の霧ヶ峰高校ミスコン一位である。
だが、俺は全く嬉しくない。理由は簡単だ。モブである俺がモブでいられなくなるからだ。今まで築き上げた普遍さを、このあり得ない告白イベントで崩壊させてしまう。それはどうしても避けなければならないものだ。
じゃあ、振ればいいだろう。それが出来ないから困っているのである。告白するとき右手を前に出す意味は皆にとってはどう思うのだろう。普通に考えればお付き合いをしたいという誠意のこもった右手なのではないだろうか。決してコクった人を脅すためのものではない。
「あの~、なんでスマホ持ってるのかな?」
そう、彼女は右手にスマホを持って写真を見せつけてくる。そのまま彼女は答えた。
「これが見えないの? 陰でやってることはバレバレなのよ。ばらされたくなかったら私に協力しなさい。」
結構きつい系の人なのかよ。学校での印象と全くちげーじゃねぇか!
こうして、俺のモブ生活に一筋の亀裂が入ってしまった。