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生きにくいこの世界で愛を叫ばせろ!  作者: ららららーらら
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VS商売敵VSでっかい鳥





少し人と違うだけじゃないか。






お前らは俺を化け物と言うが



殴られたら痛いのも、血の色が赤いのも



心ない言葉を浴びせられ、悲しいと思うこの心は



人の持つものではないのか



























『何も無いところだけどゆっくりしていってちょうだい。』




私はショウとお姉さん(なつ)の家に泊めてもらう事になった。


ここでショウスケの字が判明。勝助と書くらしい。

農民では珍しく、夏さんは字が書ける。

昔の日本よろしく、農民はほとんど字が書ける人がいないのだ。


え?私?そりゃあ師匠に叩きこまれた&前世の知識よ。ここはチート名乗って良い?






あの商売敵出現発言の後、私も妖退治をしていると話したら


『えっ?お嬢ちゃんが?』


『危ないから止めときな。そういう事はあの兄ちゃんに任せときなって。』


『良く見たらお嬢ちゃんの着物、仕立てが良さそうだな。何処かのお姫さんか?』


『お姫さんがこんなとこに1人でいるわけねぇだろ。』


『とにかく怪我はさせらんねぇよ。ショウの恩人だからな。刀持ってるようだが、危ない仕事は男に任せときなって。』



etc.etc.・・・。




この村の男性達は紳士的な人が多いらしい。

出来れば幼少期に出会いたかったぜ・・・。



確かに私の着物は庶民にしてはボロじゃない。

理由は現代日本の満たされた生活で生きてた私がボロを着るのが嫌だったからだ。

と言っても着物はわりかし高価で、そうそう買い替えれる物じゃない。


じゃあどうしてるかって?


リメイクしてるからさ!オタクを舐めるなよ!こちとらコスプレ衣装製作で鍛え上げられた腕があるのだ!はっはっはっは!!!はー・・・











乾燥&焙煎ヨモギとオオバコを合わせたものをお茶の様にして夏さんに飲ませた。濃いめに入れるのが良い。



『ふぅ・・・少し楽になったよ。ありがとうね。咳の薬分けてもらって。』


『気にしないで下さい。全部解決したらショウにヨモギを摘んできてもらう約束をしてますから。』


『おう!バケモノが退治されたら咲来姉においらがカゴ一杯に採ってきてやるよ!』


夏さんは私達2人に優しい笑顔を向けると


『ふふっ、じゃあ早く妖が退治されると良いわね。あの人、(せん)さんと言ったっけ?彼に全て任せましょうね。』




そう、この村の人達は私の妖退治に関して信用していない。

勝ち気な小娘が名乗っているだけだろうと思われている。


まぁ、良いんだけどね。

べっつにここでの報酬はあまり期待してないし〜拗ねてないし〜出鼻挫かれただけだし〜




そう言えばここへ来る前に退治屋の千と言う男に会った。


一言で言うなれば、





すっっっっっっっっごいイケメン!!!






右目を布の様な眼帯?で隠していて、さらに隠すように右側の前髪が長い無表情美人だった。



画面ごしならウッホホーイ!推し発見ー!!!と騒ぎたててるところなんだけど、悲しいかな、現実の無表情美人はかなーり近寄り難い。



鑑賞用にします。と、心に決めていたところに




『何の用だ。・・・大した用がないなら俺に近付くな。』



と絶対零度な眼差しで言い捨てられた。





ふぇぇ恐いよぉと心の幼女が震えるのと同時にうるせー!てめぇに用なんざねぇわ!仕事横取りしやがってこのヤロー!!!声までイケメンかよふざけんな!!!と殺意の覇道に目覚めそうだった。



私を奴に会わせたおっさんは 『な、良い男だろ ?』 と親指を立てていた。


ここの住民メンタル鋼すぎません?





ショウと夏さんはとても良い人達で信用できそうなので、私荷物の整理をさせてもらう。



荷物を広げ、中身をチェックしていると興味津々なショウが近寄ってきた。




『なぁなぁ咲来姉、これは何?』


『それは腹痛の薬、そっちは傷の薬、心の臓に肩凝り腰痛、頭痛、熱さましに尿の薬。などなど。』


『咲来姉って薬売りなのか?』


『違います。』




本業は妖退治屋ってば〜薬が多いのは病気が怖いから。


皆さんは薬草と呼ばれるものを知っているだろうか?

薬草と言ってもRPGゲームやファンタジー小説に出てくるものではなく、現代日本にも存在するような、ヨモギ、オオバコ、ハトムギ、マタタビの実、柿の葉、その他もろもろ。

と言っても私が持っている薬はあくまで対症療法の漢方薬の様な薬で限界と言うものはある。

医学ってもんが発達してないからね。


どうせならゲームとか小説みたいに回復魔法!つって怪我とか病気が治れば良いのにこの世界リアルすぎるわ。


こういう時に元医者とかだったらなんやかんやでオペとかしちゃうんでしょ?ペニシリンとか作っちゃうんでしょ?漫画とかドラマとかで観た。

私は看護師だからねぇ助手に入る事はあっても執刀はできないのだよ。

本当に前世は恵まれていたんだなぁと心底思う。

心優しきナースでもなかったと思うし、今世もナイチンゲールにはなれないわ。




アンニュイなため息をつきながらショウの頭をぐ〜りぐ〜り撫でてやった。










翌日。



『今日の夜、いよいよらしいぜ。』



隣の家のおっさん、可愛い妻と娘がいるらしい、が教えに来てくれた。


『なんでもやつが活動しねぇ夜のうちに巣を見付けて狩るとかなんとか言ってたな。まぁ、あの千って男、無口でよ、詳しいことはあんま聞けなかった。』




その妖やっぱり夜活動しないのは鳥目、ってやつだからだろうか?




『じゃあこの頭痛の薬もらってくぜ〜ありがとな!』



そう、隣のおっさんがここに来たのは情報提供ではなく私から薬を買うためで、近場の家の人達がさっきから何人か訪れている。



昨晩の咳の薬うんぬんから他にも持っているんじゃね?あのお嬢ちゃん本当は薬売りじゃね?みたいな話になったらしい。


私は今や薬売りとして認知されている。


だから妖退治屋だってば。

ビビりながらですが、前世と違って身体能力は格段に良くなっていると思う。

まぁ、ここの人達は老若男女逞しい人ばかりだけど。



ハッ!いや、まてよ。薬売りとは世を忍ぶ仮の姿、その正体は魑魅魍魎を狩る退治屋だったのだ・・・って格好くね?

疼く、封印されし右腕が疼くぞ!



1人、中2的思考に浸っているところ夏が近寄って来た。






『ねぇ、咲来、外が何か変じゃない?』


『え?』








『化け物だー!!!やつが現れたぞー!!!』








ビュォォオオオオァ!!!







その瞬間、家が揺れた。



『きゃあ!』


『わわ!』


『ぬうぉああ!』



何!?風!?




ちなみに叫び声は上から夏、ショウ、私。


一番色気ねぇって?うるせーよ!






『うわぁぁぁあ!!!』




外から叫び声がした。


襲われてる!?




『夏さん!ショウ!絶対家からでないで!』





私は2人の家から飛び出した。













外は中々の有り様になっていた。



家の壁や屋根と思われる木片や、ボロボロの布切れ等が其処らじゅうに落ちている。



消して多くはないが血痕も。怪我人もいるらしい。







そして上空を旋回する大きな鳥。



胴の部分だけで軽トラくらいは有りそうだ。それが羽を広げるとさらに大きくみえる。





黒とオレンジが混ざった色に鋭い爪、嘴、異様に目立つ丸く、濁った眼。




そう、一言で言うと







『キっっっッッモ!!!』






「クェェエアアァア!!!」





鳴き声もキモい!・・・ってこっち向かって来た!






爪を剥き出しに飛んで来る。



肢を切り落として・・・ムリですね!






ギリギリの所を横にでんぐり返りで避ける。




バケモノ鳥は家の一部を抉ってまた上空に飛んだ。




はっきり言ってあんなの相手に接近戦する自信がない。



せめて飛びさえしなきゃ・・・







そしてもう1つ気になる事がある。



あの千と言う退治屋が現れない。



あんなに偉そうな態度だったくせに村のピンチに何をしてるんだ?



まさか、怖じ気付いたんじゃ・・・








『キャァァア!!!あんたぁぁあ!!!』






女の人の悲鳴が聞こえた。



旦那さんらしき男の人が血を流して倒れている。




そこに旋回して戻って来たバケモノ鳥が向かって行った。




『ふざけんなっ!!!』




間に合え!




私はある物を一か八かでぶん投げた。



それはもう少しで爪が男の人に届きそうだったバケモノ鳥の右目に突き刺さる。





「ギャァァァアアア!!!」





バケモノ鳥は痛みに身体をばたつかせ、目から血を流しながらながら山に向かって飛んで行った。










『・・・・・行ったか・・・?』



誰がともなくそう呟いた。






『あ、あんた!大丈夫かい!?』



仁助(にすけ)!』


『とりあえずおらん家へ運べ!』







仁助と呼ばれた人は近くの家へ運ばれる様だ。



仁助が通った後には血が点々と落ちている。



止血くらいなら私にもできる。

私もそこへ向かおうと歩き始めたところで、横目にあの男が見えた。




千だ。




千はバケモノ鳥が帰った山をじっと見ていた。






言いたい事は沢山あったが、怪我人が優先と思い運ばれて行った家へ向かった。








あの後はそれなりに大変だった。


幸いにも大きい怪我は腕だけで後は転んだ時に付いたらしき小さな切り傷や打撲だった。

太い血管も切れてない事が助かった。


しかし、でかい爪で付けられた傷はかすっただけでもそれなりの怪我で縫った方が良さそうな深さだった。



とりあえず止血して傷口を良く洗い、私が傷口を縫った。


現代日本では看護師はそんな事出来ないと思うが、ここではそんな事関係ない。やらなきゃいけない。




『しかしあのバケモノがこんな風に襲って来たのは初めてだぞ。』



『え?そうなんです?』


『あぁ。今ではせいぜい近くの畑くらいだ。家が集まる場所へは来なかったぞ。』









そんなこんなですっかり日が暮れてしまった。




『なぁ、咲来姉、ほんとに行くの?』



夜の山に入ろうとする私をショウが止める。

皆寝静まった隙にこっそり出たつもりだったが起きてしまったみたいだ。



『最初はそのつもりで来たでしょ?向こうは怪我してるし大丈夫だって。』



それに私は強いんだから!と、拳をつくってみたが釈然としない顔をされた。



『確かに咲来姉は刀持ってるし、夜の山で野宿するような野性児かもしんねぇけど・・・』


『おい。』




うつ向いてしまったショウの頭を撫でてやる。




『大丈夫。明日の朝までには必ず戻ってくるから心配しないで。』


『でも・・・。』



『ショウ。』




ショウの目線に合わせてしゃがむ。



『あいつは今までしなかった行動をしはじめた。見たでしょ?あの大きさ。明日は家を壊して襲って来るかもしれない。今夜やらないと後がないかもしれないんだよ?』



わかるね?と、聞くと頷いた。



『必ず帰って来てくれよ!まだヨモギだって採ってないんだ!約束!!!』



『私は約束を破らないで有名な女だよ?必ず帰ってくるからそれまで村の皆をよろしくね。』



うん!と元気く返事をしたショウを背に足を踏み出した。






簡単に山へむかった。みたいなことを言ったが、夜の登山は大分危険なので良い子はもちろん悪い子も真似しないように。












バケモノ鳥が帰ったであろう山へ入り、先へ進む。大分ハイペースの登山だが、いかんせん時間がない。


暗いうちに山の中にあるヤツを見付けなくてはいけない。




あの後別の山へ移動してしまったことも考えたが、片目を潰されたその日、しかもアレが刺さったまま移動するのは考えにくい。



アレとは、そう、 "くない" である。



何で私が憧れの忍者グッズを持っているかと言うと、拾ったからである。



そんなお手軽に拾えるものかと思うかもしれないが、時は乱世、戦場後に旅をしてればそれなりにあってしまう。



そこには兵士達の死体とそれを漁る人や動物。



今やちゃっかり物を拾っているが最初に見たときは吐いた。



酷い光景だが、これが当たり前に起きるのだ。












『お前、来たのか・・・。』




『!!!??』





真っ暗な中急に話しかけられてびっくりした!心臓止まるかと思った!



人間、本当に驚いた時は声がでないもんなんだね!



『何で、うし、ろから、話かける!?』



『静かにしろ。夜とは言え気付かれたら面倒だ。』




誰のせいだと!?




『あんな物を持ってたくらいだ。少しは出来るようだが、足手まといになるなよ。』



『ならんわ。つーかあんた、何で村にあいつが現れた時駆け付けなかったのさ?』




そう、私が気になっていたのはそこだ。


仮にも妖退治を頼まれていて、尚且つ引き受けたにも関わらずあの騒ぎで出て来なかった。




『・・・村の人間には妖退治は夜と言ってあった。村の連中の話によると、あの妖はいつも違う方向から飛んでくるらしい。よってやつは特定の巣を持たないと見ている。』









『四方を山で囲まれたこの村からやつの居場所を特定するのは不可能に近い。』








『やつは獲物を持ち帰る習性がある・・・』







あれ?ちょっと待てよ・・・






『あの時は余計な事をと思ったが、結果居場所がわかったからな。』







もしかしてコイツ、村の人をエサにしようとした?








信じられないようなものを見る目をしてたんだと思う。

千は私の目を見て言った。







『多くを救うには多少の犠牲は付き物だ。』









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