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ヒミツの花園?

作者: 双葉 ミリカ

普通の朝。

普通の食卓で普通の朝ごはんを食べ、普通の家を普通の時間に出発。

普通の街並みを横目に、普通の速度で普通に登校。

普通の学校の普通のクラスで普通の席につき、友達と普通の会話をする。


さぁ、今日もまた普通の一日が始まる。

ただ一つ……


「おはよ〜(あずさ)〜」


「お、おはよう(あき)!」


「今日も梓はかわいいなあ〜ん〜??」


「ちょっと……やめてよ〜秋!」


本当に辞めて欲しい。

そんなに近くにいるのでさえ危ないのに、ふにふにとほっぺたを両側からつまむのは本当にいけない。最近ハマっているのか知らないが毎日毎日朝一番でむにむにをくらうので教師付きはいる時はつい身構えてしまう。

なぜなら……


『僕は女装した男なのだから!!!』


昔から家のしきたりだかなんだかで、「病弱な男の子は女の子の格好をさせて今後の無病息災を祈る」とかいう訳の分からない風習に付き合わされてきたがそろそろキツい!

むしろよくここまでなんとかなった方だ!中学校に入った時、普通の男の子の僕は普通に声変わりが始まり高い声が出なくなった。その時、小学5年から始まったボイストレーニングのレッスンの意味を理解した。我が一族に伝わる伝統的な発声方法を身につけた僕は、もはや女の子にしか聞こえないような美声を出せるよくわからんけどハイスペックな喉を手に入れてしまった。


問題はそれだけじゃない。反抗期から思春期に移る重要な時期に毎日毎日女装させられて、そのことはうまいこと隠さなきゃ行けなくて……歪むぞ!?性格!?

まぁ? 僕はたまたま? 女装がしょうにあってたし? 友達もあまり多くなかったからそこまで困ることは無かったけど……体育の時間と修学旅行は大変だったなぁ……

学校側の配慮もあったとはいえ、不自然の内容振る舞うのは至難の業だった。これも何故か家でレッスンを受けたから乗り切れたのだが。


このしきたりはどうも家を出るまで続くらしいので、とりあえず高校卒業まではこのままだ。はぁ……これはこれでもう慣れたけど、やっぱり普通の高校生活も過ごしてみたーーーーい!!!!

そんな欲求を満たすために、休日は男の格好をして街を歩いている。普段と違う格好で外を歩くのはなんだか違和感があるが、とにかく開放感がすごい。……あれ?逆では?



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「おはよ〜(あずさ)〜」


「お、おはよう(あき)!」


「今日も梓はかわいいなあ〜ん〜??」


「ちょっと……やめてよ〜秋!」


今日も親友が可愛い。

黒髪ロングで気弱な親友梓。高校に入学した時初めてできた大切なお友達。

入学式の後、同じ中学から来た人がいなくおどおどしていた所、声をかけてくれた。それが梓の出会いだった。

高校ではオシャレさんになろうと茶髪に染めてみたが、見た目にメンタルが追いつかず挫折。親には「黙ってればイケイケ女子高生」と心底バカにされた。うぅ……黙っていれば……


そんな失敗を引きずりながらどんよりした気持ちになっていた時、舞い降りた天使が梓だった。控えめで、でも可憐で美しくて、そんでもっていい子!


でも……そんないい子に嘘をついている。

いつかは打ち明けないといけないのはわかっている。嘘はいけないし、そもそもいつまでもつきとおせるわけがない。でも、もし梓が受け入れられず絶交なんてされたら……キツい。ゴメン梓……


『僕は女装した男なんだ!!』


昔から家のしきたりだかなんだかで、「本当の姿を一族以外の人に見せてはいけない」とかいう訳の分からない風習に付き合わされてきたがそろそろキツい!

家では普通の格好だけど、家から出たら女装女装女装!!!別に女装しろというルールではないので、一時期ダース・〇イダーみたいに全身をマスクやマントで覆ったこともあったけど、普通に不審者扱いされて危うく捕まりかけた。

というわけで、結局女装に落ち着いている。幸い、元々女装向けな顔と華奢な体格だったので姿はクリア。(なぜか一族秘伝の女装マニュアルが存在していた) 声は一体どうなるのかと不安だったが……案外特訓でなんとかなるものなんだなあと……


まさか、毎日一緒にいる相手が女装した男だなんて……思ってもみないだろうなぁ……

我が一族のものが真の姿を見せていいのは、一生を誓い合った相手のみ。結婚してからは誰に対しても隠さなくていいらしいけど……


「ちょっと秋さん! この前の委員会の資料どうなった?」


「あ、委員長!忘れてた!ごめーん今渡す!」


「もぉ……秋はいつもこれだよね……」


「梓には助けて貰ってばっかりだもんね〜」


いつか本当の姿を見せられる時が来るのかなぁ……



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ちょっと秋さん! この前の委員会の資料どうなった?」


「あ、委員長!忘れてた!ごめーん今渡す!」


同じクラスの秋さんはよく提出物や連絡を忘れる。悪気が無いのはわかっているのだがちょっと困る。このクラスの全てをまとめる委員長である私の仕事が大変になるのでもうちょっとでいいから頑張って欲しい。


4月、この高校に入学した時私はクラスの委員の長である委員長になることを決めていた。なぜなら……


「私は女装して女子校に潜入したスパイだから!!」


生まれた時から親はおらず、怪しげな施設で育てられた。施設のボスはどう考えても裏の世界の人だったが、身内の面倒はしっかり見る……そういう人間だった。ボスや施設のみんなのおかげで私は健康に成長し、10歳の誕生日、初めて仕事をこなした。

もっとも、ボスは殺しを私にやらせるつもりはなく、主に幼さや女装による可愛さ弱々しさを餌に情報をあぶりだす任務を多く与えた。私はこの仕事に向いていたらしく、ボスの特訓もあり次々と任務をこなして行った。


そんな私に課せられた次なる任務は……「とある女子高の闇を暴け」というものだった。

この学校は表向きは普通の私立高校だが、どうやら裏で怪しいお金が動いているらしい。その証拠を突き止めてこいというもの。

若く女装にも慣れている私にぴったりの任務なのだが……どうもなかなか慣れない。


ここまで施設で勉学を身につけてはいたが、まともに「学校」に通うのは初めてだ。ここまで数々の修羅場をくぐり抜けてきたが、逆に平和すぎて落ち着かない。この気持ちは一体……


「委員長〜次移動教室だよ〜」


(かえで)さん、ありがとうございます!」


「委員長真面目でしっかりしてるのにたまに抜けてるよね〜なんでだろ?」


「あなたには負けますよ」


「えへへそうかな〜」


バスケ部のエース楓さん。最近私は彼女のことばかり考えている。いや、きっと一緒にいる時間が長いからだ。彼女は一歩引いた他の人と違いグイグイ近づいてくる。そんなに私は近寄り難いオーラをだしているのか……?

みんなと関わるために委員長になったんだけどなぁ……



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「委員長〜次移動教室だよ〜」


(かえで)さん、ありがとうございます!」


「委員長真面目でしっかりしてるのにたまに抜けてるよね〜なんでだろ?」


「あなたには負けますよ」


「えへへそうかな〜」


うちのクラスの委員長は真面目で仕事のできるキャリアウーマンって感じの女の子だ。

いつもキリッとしていて、仕事も200%こなす。バカな自分と比べるととても恥ずかしくなってくる。

でも、どこか抜けていて常識が欠落している。この前、学校帰りにクレープ屋さんに寄ったらジャングルのおかしな色の爬虫類を見るような目で生クリームマシマシのいちごクレープを眺めていた。それからというもの、学校帰りに委員長と買い食いするのが私の最近の楽しみになっている。


そんな委員長私は隠し事をしている。

いつか言わなきゃ!と思ってはいるのだがなかなか言い出せるものでは無い。実は……

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