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ミミックです。今日もドッキリを仕掛けたいと思います。


ダンジョンとは、神が作った構造物のことである。


中には魔獣がひしめき合い、最奥にたどり着いた者には神から褒美が与えられると言われている。

最奥までたどり着けなくても、ダンジョンの至る場所に宝箱が設置されている。

言うなれば神様からの残念賞だ。


冒険者は魔獣から素材を剥ぎ取ったり、ダンジョン内の鉱物や植物を採取したり、宝箱から宝を持ち帰ることで、生計を立てている。


そして、ここは邪神バローナクが作ったと言われる、世界最難関ダンジョン『邪神バローナクの塔』。


全100層に及ぶ巨大な塔は、上に登るにつれて凶悪な魔獣が出現する。

その分、上層ほど上質な宝が見つかる。


これは、そんなダンジョンに住む、シェイプシフター族のミミックの物語である。



◇ ◇ ◇ ◇



おはようございます。

ミミックです。


わたくし、シェイプシフターという、化けるのが得意な悪魔です。

現在は、宝箱と合体し、同化しています。

化けるのが得意ってだけで、それ以外の事も、ある程度できます。


さて、現在77層に冒険者3名が、こちらへ向かって来ています。

30代の男性が1名、50代の男性2名。


これから彼らに、ドッキリを仕掛けたいと思います。


実は彼ら、ここに至るまでに仲間を1人死なせてしまっています。

魔獣に不意を突かれて殺られたのです。


そこで私は考えました。


宝箱から死んだ仲間が現れたら、彼らはどんな反応をするのでしょうか?


きっと彼らは、涙を流して喜ぶことでしょう。


普段は意地の悪いドッキリをしているわたくしですが、たまにはサービスもしますよ。



「冥府より甦れ。【蘇生】」



20代の男性が、宝箱の中に現れました。



「ん? ここは……」


「ちょっと失礼しますよ」


「なっ?! 魔獣?! やめろ、何をす……フー、フー!」



大人しくしてもらうために、彼の手足を縄で拘束し、口にバンダナを巻きます。

そして宝箱の中に入れ、待機です。


さぁ、ターゲット3人がやって来ました。

この瞬間がいつもワクワクしますね。



「お、宝箱か。罠が仕掛けられていないだろうな。

全てを写せ。【鑑定】」



ターゲットの1人が、宝箱を鑑定スキルで鑑定しました。

ですがわたくしには【鑑定阻害】と【鑑定偽装】があります。

彼の入手した鑑定情報は、これが普通の宝箱だという偽の情報になっています。



「【鑑定】は白か。一応槍を使って、距離を取って開けるとしよう」



さすがに、ここまで来た冒険者だけあって、鑑定結果を鵜呑みにせず、慎重ですね。


ガチャリ。

宝箱が開きます。



「ふぐー! ふぐぐー!」


「なっ?! アレク?!」



感動の再開です。



「お前ら騙されるな!

アレクは死んだ! これはたちの悪い魔獣の変装だ!」


「ハッ! そ、そうだ。死人が蘇るはずがねぇ」


「よくも俺たちの仲間を侮辱するような真似を!

許さねぇ!」



あっれー。おっかしいぞー。


アレク君との感動の再開が、どうやら勘違いで変な展開になってしまってますね。



「死ねぇ!」


「ふぐっ!」



アレク君は、槍の攻撃を避けました。

そのせいで宝箱であるわたくしに攻撃が届きます。

まあ痛くも痒くもありませんが。


ですが困りましたね。

彼らはどうやらアレク君を偽物だと思いこんでしまっています。


このままだとアレク君が殺されるので、アレク君を避難させましょう。



「我、距離の概念を無視す。【転送】」



アレク君をダンジョンの外に飛ばし、ついでに拘束していた縄を解きました。



「なっ?! この宝箱、ミミックだ!」


「はい。その通りです」


「よくも趣味の悪い幻影を見せてくれやがったな!

覚悟しろやぁ!」



ドコッ! バキッ! ドカッ!

彼らはわたくしに攻撃しました。

ですが【衝撃反射】のスキルを使い、彼らに衝撃を跳ね返して自滅させました。


といっても気を失っているだけです。

縄で拘束して、捕獲しておきましょう。


捕獲した彼らは、ダンジョンに住む淫魔であるサキュバス達に連れて行かれました。

死にはしないでしょうが、死ぬほど搾り取られることでしょう。

グッドラックです。



◇ ◇ ◇ ◇



こんばんは。

ミミックです。


今日のターゲットは、30代女性5名のパーティですね。


以前にやった、宝箱に大量のゴッキーを仕込む方法をリトライしようかと思いましたが、どうやら彼女たちには通じ無さそうです。

とっても気が強そうなのです。


というか短髪で男っぽい顔ぶれです。

化粧もオシャレもしていません。


きっと彼女たちは、女を捨て、このダンジョンで稼ぐことに全てを注いでいるのでしょう。

涙ぐましい限りです。


そこで私は考えた。


偽物の金銀財宝を彼女たちに持ち帰らせ、ぬか喜びさせてやろう、と。


希望を与えられ、奪われた瞬間に、どのような顔をするのかが楽しみでなりません。


金の代わりに黄銅、銀の代わりに白銅を使用して作った装飾品の数々。

わたくしが夜なべして、せっせと作った物です。


それらを宝箱の中に仕込み、ターゲットを待ちます。


しばらくすると、ターゲットがやって来ました。



「お、宝箱だ」


「開けよう、開けよう」



ターゲットは宝箱を側方から開けます。

きっと矢の罠を警戒していたのでしょう。



「ほぅ、装飾品か」


「何と美しい」



ターゲットが宝箱の中身を全部回収した所で、わたくしは唱えます。



「我、距離の概念を無視す。【転送】」



ターゲットを外へ飛ばしました。



「では、覗き見させていただきましょう。

盤面を見渡す力を。【千里眼】」



ターゲットの様子を眺めることにします。



――――――――――――――――――――



5名の女冒険者達は、王の間に呼び出されていた。



「面をあげよ」


「「「「「はっ!」」」」」



女冒険者達は、冒険者ギルドにて宝を売り払った翌々日、王に謁見するように言われたのだ。



「冒険者ギルドでは、これらの装飾品が偽の金や銀で作られているからと、二束三文で買い叩いたらしいな」



王は、自分の隣に積んでいる装飾品の1つを持ち上げる。



「だが、この首輪を【上位鑑定】したら、超越スキル【超越剛力】が付く効果らしいぞ。

他にも、これらの装飾品は全て超越スキル付与の効果を持つ物ばかりであった。

お前たちには、これらの価値が分かるか?」


「恐れ多くも存じ上げません」


「これ1つで、一騎当千の兵が1人出来上がると考えてみよ」


「でしたら、数千万Gくらいでしょうか」


「1000億Gだ。これらはどれ1つとっても国宝級だ。

他国にでも知られたら、たちまち戦争が起きるほどの魔道具だ。

たまたま私がギルドマーケットで骨董品を物色していたからよかったものを」



国王は、パチンと指を鳴らす。

どこからともなく兵士が現れ、数十億Gの金貨入りの袋を5人に手渡す。



「良いか。決して口外しないように。これは口止め料だ。

言えば一族皆殺しになると思え」


「「「「「はっ!」」」」」



5人は、王の間を離れる。


そうして、これからについて話し合う。


ある者は冒険者をやめて実家に帰るとのこと。

ある者はまだまだ稼ぐつもりとのこと。

ある者は宿屋を始めるとのこと。

ある者は世界を旅するとのこと。

ある者は明日のことはわからないから、打ち上げしようぜ、とのこと。


5人には笑顔が溢れていた。


そして、それを見ていたミミックは非常に不満げであった。



◇ ◇ ◇ ◇



こんにちは。

ミミックです。


最近思うんですよ。

ここに来る冒険者は、緊張感が足りない!


【探知】スキルが出回る前は、いつどこから魔獣が来るか分からないという緊張感がありました。

【鑑定】スキルが出回る前は、新種の魔獣との戦いの際はもちろん、宝箱を開けるのも命がけという緊張感がありました。


ところが、それらのスキルが出回り、冒険者は危険を犯す事が少なくなりました。

それ自体は良いのです。


問題は、いつ危険が生じるか分からない、という緊張感が激減している事です。

気合が足りませんよ!


そこでわたくしは考えました。


宝箱を開けた瞬間、冒険者を危険な目に遭わせてやろう、と。


魔獣が詰まった部屋に転送する、【鑑定】出来ない罠に引っ掛けてやる、等を考えましたが、しっくり来ません。

普通過ぎます。もっとスペシャルな危険をプレゼントしなければ。


というわけで、宝箱を開けた冒険者パーティを、ダンジョンのラスボス部屋へと飛ばすことにします。


十分な準備をせずにいきなりラスボス戦を強いられる冒険者。

一体どんな反応を見せてくれるでしょうか?


非常に楽しみです。


【転移】をさせる罠を仕掛け、【鑑定偽装】を施し、準備完了。


10分後、ターゲットがやって来ました。

4人の男女パーティ。

男2人と女2人で、全員10代ですね。



「サーシャ。俺、この戦いが終わったら、君に伝えたい事があるんだ」


「何よ、言いたいことがあるんだったら今言いなさいよ!

ま、まあ待ってあげてもいいんだけど!」


「ワイは、このダンジョンを攻略したら、実家でのんびり畑仕事したいなぁ」


「アタシは友達の結婚式に招待されてるから、それに参加しようかしら」



4人は宝箱を【鑑定】した後、普通に開けました。

そして無事に、ラスボス部屋へと【転移】しました。


結果を見届けるために、私も冒険者とともに現地へ【転移】しますよ。


――――――――――――――――――――


「なっ?! ここは?!」


「ボス部屋かしら? 何階層のものか知らないけれど」


「ボスはあれかいな?」


「……寝てるわね」



大部屋の真ん中の荘厳な椅子に座る有翼の悪魔は、ぐうぐうといびきをかいて寝ていました。


って、ちょ?! ラスボスのルシファーさん!

仕事、仕事ですよ!


4人は冷静かつ淡々と、こっそりと近づき、ルシファーさんの首を剣ではねました。

寝首をかくとは、何て卑怯な連中なのでしょう! ルシファーさーん!


ルシファーさんが息絶え、奥の部屋が光り、美しい女性が現れます。



『ダンジョンの攻略、おめでとうございます。

私はダンジョンに囚われていた女神です。

あなた方のおかげで魔王が死に、封印が解かれました。

お礼に、莫大な富と、強大なスキル、そして後の世まで勇者として語られる栄誉を与えましょう』



4人に財宝の贈与と、スキル付与を行う自称女神。

確かアイツ邪神バローナクじゃありませんでしたっけ。

このダンジョンを作ったと言われてますが、正しくはこのダンジョンに封印されていた、なのですがね。



『さぁ、ダンジョンの主を失ったダンジョンは崩壊します。

私が【転移】で外へと送り届けて差し上げましょう』



4人は自称女神によって外に飛ばされました。


そして、大きな揺れが起きます。

ダンジョンの崩壊が始まったのでしょう。



『くくくく……愚かな人間どもめ!

今、封印は解かれた!

奴らの寿命が尽きた頃合いに、再びわらわが世界を牛耳ってやろうぞ!』



あっ、邪神が本性を表しました。

そして【転移】でどこかに行ってしまいました。


というか、観察している場合じゃありませんね。



「冥府より甦れ。【蘇生】」



私はダンジョンボスのルシファーさんを蘇生します。



「……ん? 今、何時だ?

というかミミックよ、ダンジョンが揺れていないか?」


「ダンジョンが攻略されたから、崩壊してるんですよ、ルシファーさん」


「寝ている間に死んだのか。ダンジョンは神様に頼んで、また作り直しして貰わねばならんな。

ところで、封印してあった邪神は?」


「どこか行きましたよ」


「次のダンジョンが出来上がった時に、再び捕え封印するとしよう。

あいつは人間の手に余る代物だ。

我が監視しておかねばなるまいて」



ルシファーさんは、ダンジョン内部の魔獣に【以心伝心】スキルで避難指示を出します。

ダンジョンには非常口が隠されていて、そこから地上の各所へとランダムに【転移】できるようになっているのです。



「では、さらばだミミックよ。

願わくば、また同じダンジョンで働きたいものだな」



ルシファーさんは非常口から出ます。

私もダンジョンから出ます。


まさかダンジョンの攻略を手伝ってしまう結果になるとは。

人間だったら反逆罪で殺されているでしょうか。



『ん? 何だお前』



あっ、邪神さん。

転移先が彼女と被ってしまいましたね。



『丁度良い。妾の経験値となれ』



私を倒そうと【風刃】スキルを繰り出してきましたが、所詮は封印が解けたばかりの絞りカス。

ひょいひょい、と避けてボディブローを食らわせ気絶させます。

ついでに【封印】を施し、木箱に閉じ込めておきます。


む、思いつきました。

次のドッキリは、宝箱を開けたら邪神が現れた件、これでいきましょう。

そのドッキリが終わったら、ルシファーさんのダンジョンに封印した木箱を郵送することにしましょう。


さて、新しく住まうダンジョンを見繕うことにします。

どこにしましょうかね。


ルシファーさん以外のダンジョンだと、不思議なことに、私が邪魔者扱いされることがよくあるのです。

何故かは知りませんが。



ネタは思いつくけれど、それを活かすだけの執筆力が足りないorz

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミミックさん強すぎ可愛いすぎなのでは? 偽のアクセサリーのお話、最後不満そうにしているところとかたまりませんね [一言] ルシファーさんが呆気なく殺されるところ、何回読んでも笑ってしまい…
[一言] ミミックさんには某ダークファンタジー系アクションRPGの八頭身ミミックを参考にしてもろて あのフォルムで殴りかかってきたり、チンピラみたいなトウキックしてきたり、竜巻旋風脚してきたりするので…
[良い点] 笑わせていただきました、自由すぎるだろ!! [一言] キサマ!ミミ○リーマンやったことあるな!?(ほめ言葉)
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