……いんふぃーるどふらい……。
窓が雨色の光を部屋に捩じ込んでくる。
朝か。
私はベッドの中を手で探って機種変したばかりのガラケーを探り当てる。そして、私が居るべき本当の居場所の光を顔に浴びる。
「6:48(電話)(マナー)」
メール50件。着信50件。
(メール)着いたら殺すから!」
(メール)いい加減にしてよ!」
(メール)7:00に部屋に着く」
ネットからの来訪者、彼女からの殺害予告メールが50件。恐らく、もう到着まで猶予がない。一応着信履歴もスクロールするが、全て同一の名前。ゲシュタル子。
残り数分で彼女の来襲に備えなければならない。大体いつも予告5分前に来るのであと7分程度で支度をせねばならない。
先ず歯磨き、これを5分で終わらせる。
そして、部屋の硬い物と尖った物をベッドの下に放り込んで、代わりに先週の雑誌とかを無造作にばら蒔く。ヤンジャン1冊は念のため腹に仕込む。
ベッドの脇にあるスキン用品置き場は彼女が居る時以外は絶対に触れない。
さぁ、掛かってこい。
6:55。
私は再びベッドへと潜り込む。
……。
6:59。
おかしい。
……来ない。
ぴか、どーん。
外から真っ白な光と共に轟音が炸裂する。
雷か。
私は胸騒ぎと共に起きて、サンダルを履いて安アパートの外へ駆け出す。
そこに異世界トラックがどーん!
「あれ?」
痺れた脚とアパート前の塀に打ち付けた頭。目を閉じながらも痛みを確認する。そして、目を開いて脚を確認する。そして、頭を触ると掌に血が付いた。
「捕まえた」
彼女の屈託の無い笑顔に俺は勃起した。仕込んだヤンジャンが硬く盛り上がる。
私はその後、4日間。彼女の父親が経営していた工場に監禁された。……それはそれは楽しい監禁生活だった。不安と喜びと、安堵と悲しみを、彼女と共有して過ごした。
◇ ◇ ◇ ◇
「知ってます? お客さん。朱に交わって赤くならずに甘い汁だけ吸ってると、必ず痛い目に遭うんです。3回刺された私が言うんだから間違いありません」
希望と見栄を鎖帷子に織り込んだ童貞は戸惑う。
「あの娘はやめときなさい」
眼帯片眼のマスターは悪い笑顔でマダムロシャスを差し出した。