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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
最終章 水木御所成立 天正六年(1578)秋
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いざ立たん 第五話


 石堂は不敵な笑みを浮かべた。だがそれを吉町にとっては軽蔑のようにみえる。……仕方ない。私は大変なことをしでかしたのだ。浪岡北畠の旧臣からは……今後も同じようにネチネチとやられるだろう。覚悟しなければならない。



 そして石堂、最後の問いを吉町へ吹っかける。


「せめて私はお前より浪岡北畠らしい存在だ。だがこうして(ささ)竜胆(りんどう)ではなく “(しゃく)(じょう)の先”を掲げる。津軽家の御印(みしるし)だ。なぜだと思う。」



 さあ……と吉町は首をかしげることしかできない。顔こそ笑みを保とうとしたが、たいそう引きつっていたことだろう。石堂は“わからぬか”と相当残念な素振りをし、次には大きくため息をした。








 ”石堂頼久(いしどうよりひさ)

水谷(みずたに)殿の遺志を継ぎ、亡き御所号の御子みこと母である安東の姫君を秋田へとお連れ遊ばす”



 一斉に石堂の兵どもが吉町の行列へ襲いかかった。吉町はというと呆然として……立ち尽くすことしかできない。何が起きているのか把握できない。田畑の続く道中にて、敵は周りにいないはず……。石堂は大声をてる。


「わかったか、吉町。(しゃく)(じょう)(わけ)は、津軽領内より逃げるためだ。為信の兵に扮して、すぐに領内より抜ける。」







 ”私は、強く生きることにした”





 次には石堂自らも抜刀し、吉町の首元へ刀の先を光らせた。吉町は……力を失いその場にへたりこむ。……さぞかし恐ろしかったようで、立派な装束で着飾っていたのだが……事もあろうに股間が次第に濡れていった。小便は地べたへと流れで、無様むざまなことこの上ない。



 石堂はそんな吉町を見て……斬るのをやめた。(あや)める価値もない。刀を鞘へと戻し……手下の者が御子と姫君を確保したので、長居はいらぬと早速さっそく立ち去った。



 (よし)(まち)()()衛門(えもん)はその後……津軽家中にいづらくなり、どこかしこへ逃散したという。


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