あろうことか 第一話 +油川城絵図
一通り葬儀を終えた頃、物見が慌てて川原の本陣へ駆け込んできた。
“賊徒らは大釈迦館へ逃げ込んだ模様”
ならば大釈迦へ兵を送らねばならぬと為信、前で座す家来衆の顔を一つ一つ覗く。旧浪岡北畠の者、石堂などでは話にならぬ。ここは……父親とは違うところを見てみたい。
「森岡信元、お前が大釈迦へ向かえ。」
……いやな役目だ。名分があるのはこちらだとしても、仕掛けたのもこちらだ。それだけでも根っからの津軽武士には耐えがたい。……かといって断る理由もなく、従うほかあるまい。
「わかりました。早速大釈迦へ向かいます。」
「うむ。板垣将兼も連れて行け。お前とあいつは仲がいいだろう。」
仲がいいのは確かだが……元々は父親が結びつけたようなものだ。その父はすでになく、たんなる相談相手として今がある。まさか松源寺の件が知られていまいか……。そこまでは考えすぎか。
ここでまさかの石堂が話に入る。突如として前へ進み出て、頭を地べたへとつけながら。
「私めも同行したいと存じます。浪岡北畠の者が加わっておらぬと、……大変申し上げにくいことですが、信に欠ける。それに大釈迦の者らは賊が紛れ込んでいることにまだ気づいていないだけかもしれない。私が身をかけて説得いたします。なにとぞお願い申し上げます。」
断る謂れはないが。しかし……お前があがいたところで、何も変わらぬのだよ。攻め滅ぼすことはすでに決まっている。なんとも滑稽なことか。
油川城絵図
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2018/02/15 挿絵に関して
出典元:特集 津軽古城址
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html
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