名分の元に 第四話
「そらあ見つからぬわけですよ。あのボンボンは “賊” として死んだのですから。」
野郎どもは大いに笑いこけた。沼田が“あまり大声を出すな” と注意するも、なお止まらぬ。
「きっとあなたさんの兵たちは、“御所号” という身なりを浮かべて探してなさる。」
“身なり” とは……為信はもちろんのこと、その場にいる兼平や森岡ら為信の家来衆もどういうことかと聞き返した。
「そんなにも気になりますか……。いいでしょう。ご丁寧に申し上げます。」
御所号といえば……紫の衣ですかな、それも絹の。ほかの色かもしれませぬが、とにかく深くてかつ鮮やかな色合い。しかしあのボンボンは麻の汚らしい、さらには継ぎはぎがされた衣を着て倒れているはず。皆々、身なりでしか人を判断しておらんのです。
……この話を聞いて、そういうものかと考えさせられた。津軽為信という人物とて、汚らしい恰好で歩いていれば、見向きもされないかもしれない。
「そこで、俺らは試したのです。ボンボンを試しに解き放ち、生き残ることができるかどうか。」
……それでどうなった。
「我らの仲間だと勘違いした御所の兵らに、いとも簡単に斬り殺されておいででした。」
それでも北畠顕村という人物が家来衆の信頼を集めているお方なら、こうはならなかったはず。見た目ではなく、その雰囲気でわかりますからな。