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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第七章 津軽為信、浪岡へ入る 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日夕
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見捨つる 第四話

 御所の兵らは本来の力を発揮できない。出来ぬままに斬られていく。


 刃を交えれば己が斬られないように敵と“同じくらい”の加減で抵抗するが、思わず(りき)まないようにしなくてはならない。……急に敵が刃の向きを違えると、もちろん敵にも一瞬だけ隙ができるのだが、それを見なかったことにして敵のするであろう手合いをする。


 ……出来ない者は、無惨に斬られていく。



 御所警護の(おさ)である補佐(ほさ)(たけ)(とき)は、浪岡一の武者であるので、攻めたてる敵には抵抗するし、さらには殺してしまわぬように敵を気絶させたりした。……いつしか補佐の周りだけ誰も近寄らぬ。



 ……このように戦っているうちに、御所の外より上り込んできた武者が、その誰もいないところを通って補佐へ指示を伝えた。



 “源常館(げんじょうかん)殿は、賊徒を倒せとの仰せです。御所号は……この際、諦めると”





 その指示を聞いて、何とも言えぬ想いに襲われた。御所号を守るのは我らの使命である。だがそれとは異にすることをお伝えなさる。源常館殿、お戯れを。……御所号、忍んでお祈り申し上げます。


 もう、正しい判断などできぬ。何が良くて何が悪いのか。辺りは乱れ、御所の障子は破れ、畳などは置き立てられ(やじり)を防ぐ手立てに使われている。





 ……果ては、何も考えぬ。目の前の敵を斬り殺す。補佐は大いに吠え、周りにいた為信の兵を後ずさりさせた。……奴がこちらの方へ向かってくる。殺されるぞ、逃げろ逃げろ。


 ここで小笠原おがさわら信浄のぶきよ、あちらに屈強な武者がいると聞き及び、補佐のいる軒先へと姿を現した。こうして補佐と小笠原、二人の達人たつじんは対峙したのだが……確かに補佐は強かった。彼は冷静さを失っていながらも二人でずっと争っていたし、小笠原の持つ槍をさばき、最後には彼の懐に入り込んだ。……次にまっすぐ体へ向けて刃を突き刺すのかと思ったが小笠原の機転も早く、横へれて槍の反対側で補佐の背を()った。そのまま補佐は倒れこみ、背に足で上がられ、勢いをもって槍を突き刺され、……一向に動かなくなった。

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