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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第七章 津軽為信、浪岡へ入る 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日夕
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卑怯 第五話


 ヤマノシタは大声で叫ぶ。





「黙って従えば、命はとらぬ。」





 本丸(内館)を守るは御所警護の(おさ)である補佐(ほさ)(たけ)(とき)を含む将兵五十名ほど。普段より人が少ないのは当然のことで、招集もかけていないので兵らの多くは事態に気づかないままそれぞれの町屋にいる。加えて両管領の一人である水谷利実みずたにとしざねなど浪岡北畠の主要な者らが油川あぶらかわへ出かけている最悪の状況。それでも補佐らは鎧を身に着けていないものの、常に刀は持っている屈強な者らなので戦おうと思えば戦えた。しかし御所へ押し入った野郎どもは御所号である北畠(きたばたけ)(あき)(むら)を盾にしている。刃向えばすぐにでも御所号は殺されるかもしれない。


 補佐は歯を強く横に動かしつつ何もできぬことにいら立つのだが、ここは黙って従うほかない。……身なりを見れば不埒者の集まりであるし、蔵の宝物(ほうぶつ)を与えれば満足して退散するのではないか……。そのように事態を甘く考えた。実際に押し入った何人かはすでに奪ったかと思われる宝剣や白銀の珠などを手に(つか)んでいたので、推測自体は見当違いではない。確かに先頭を進んだ野郎どもの目的の一つは宝物(ほうぶつ)にありつくことであったし、押し入ったこと自体が御所に一泡吹かせることともなる。


 野郎どもの中には牢でみたことある顔もいたので、しばらく前に捕まえた商家長谷川や不埒者らの仲間であるのは確実だ。……補佐は悩ましい。彼らに好き勝手に荒らされたままでは納得いかぬし、浪岡御所の権威は地に落ちたと同然。かといって御所号はあちらの手中にあるし、野郎どもを斬り殺すのも躊躇(ためら)われる。




 補佐と将兵らは困り果ててしまう。ひとまず賊が押し入ったことを伝えるため、大手門(東門)から近くの源常館(げんじょうかん)へ向けて人を送った。もちろんこれは親族の北畠(きたばたけ)(あき)(ただ)へ助けを求めるためである。


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