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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第七章 津軽為信、浪岡へ入る 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日夕
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卑怯 第三話

 野郎どものリーダー格の一人であるヤマノシタ。実は為信に協力するようにと策を託されていた。御所の北畠(きたばたけ)(あき)(むら)を賭け事に溺れさせたのはそのうちであり、一方でその先の策にこれまで応じずにいた。



 “顕村をこちら側で捕え、身柄を盾に御所へ押し入る”




 密かに為信の兵も我らと同じように紛れ込ませ、徹底的に御所の中を荒らす。そこまでしてくれれば、褒美として御所の蔵より宝物(ほうぶつ)を好きなように奪ってもよい……。その先の策も聞かされてはいたが、ヤマノシタにとって興味はなかった。それに当時は長老の顕範や南部代官の滝本(たきもと)重行(しげゆき)もいたので、顕村を自由にできても滝本などは顕村含め容赦なく叩きのめしてきそうなふうであった。危険を冒してまでする必要を感じない。



 ところがどうだ。今の状況を見ると、好機といわんばかりである。それに生き残った野郎どもは浪岡御所に対し相当恨みを募らしている。どこかで抜いてやらねば、どのような動きをしでかすかわからない……。


 それに策に応じて御所へ押し入れば、牢で捕われている商家長谷川の面々や他国者不埒者の仲間らを助け出すこともできる。




 ……ヤマノシタは、何やら面白くなった。もしやここまで考えられていたのか。こうなることを見越して、策は作られたのか。為信の策とは申せ、実際はヤマノシタと同じ他国者の(めん)(しょう)(さい)の企みであろう。……いやいや、本当のことまではわからぬが。





 策に応じるため、ヤマノシタは(よし)(まち)へ顕村を連れてくるように命じた。もちろん吉町は顕村を呼ぼうとしたが、それよりも先に顕村は自らの意志で吉町を誘い、共に賭け場へと向かった。しかも同日昼下がりに自らの権力を使って商家長谷川や野郎どもを助け出した上である。このこと自体はヤマノシタたちにとって喜ばしいことであったが、すでに助けるまで一日早いか遅いかにしか過ぎない。


 顕村の善意は、ことごとく無駄である。


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