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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第六章 浪岡御所陥落 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日朝
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終末 第四話


 (あき)(むら)は愕然とする。最初から知れていたのだ。初めて賭け場に入った時から、いやその前からの企み。自分は手のひらで踊らされ、とてつもなく滑稽こっけいである。



 絶望に打ちひしがれ、今すぐにでも死にたい。そう思っていると、まさか心を読み取られたのだろうか、野郎どもの一人が耳元でささやいた。





“そんなに焦らぬでも、明日には死なせてやるぞ”



 嗚呼、死なせてくれるか……だがここで枯れる顕村でもない。縄で絞められているといっても、身を動かせばゆるむのではないか。それを大勢の野郎どもがみている中でやる。その様を笑いながら野郎どもは眺める。たまに蹴りを喰らわせながら、談笑しつつ日が明けるのをまつ。……明日。なぜ明日なのか。問いに誰も耳を貸さない。





「なあ、御所を守る補佐(ほさ)とかいう苗字の奴は強いらしいぞ。」




「ほう、そうか。でも大丈夫だ。こちらには小笠原(おがさわら)がいる。名勝負が観られるぞ。」




「ははっ……、お前らも能天気だな。そんなんだと御所の兵に殺されんぞ。」




「いやいや。こちらに人質がいる以上、俺らが殺されることはない。」




「そうだな。俺らと共に為信の兵が御所へ押し入る。途中から好きに蔵を暴いてもいい。嬉しいことずくめだ。」





 (むな)しいことに、野郎どもの話声(はなしごえ)の中へ顕村の叫びはかき消されてしまう。

ただし唯一、非情な運命が待ち受けることだけはわかった。


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