終末 第四話
顕村は愕然とする。最初から知れていたのだ。初めて賭け場に入った時から、いやその前からの企み。自分は手のひらで踊らされ、とてつもなく滑稽である。
絶望に打ちひしがれ、今すぐにでも死にたい。そう思っていると、まさか心を読み取られたのだろうか、野郎どもの一人が耳元でささやいた。
“そんなに焦らぬでも、明日には死なせてやるぞ”
嗚呼、死なせてくれるか……だがここで枯れる顕村でもない。縄で絞められているといっても、身を動かせば緩むのではないか。それを大勢の野郎どもがみている中でやる。その様を笑いながら野郎どもは眺める。たまに蹴りを喰らわせながら、談笑しつつ日が明けるのをまつ。……明日。なぜ明日なのか。問いに誰も耳を貸さない。
「なあ、御所を守る補佐とかいう苗字の奴は強いらしいぞ。」
「ほう、そうか。でも大丈夫だ。こちらには小笠原がいる。名勝負が観られるぞ。」
「ははっ……、お前らも能天気だな。そんなんだと御所の兵に殺されんぞ。」
「いやいや。こちらに人質がいる以上、俺らが殺されることはない。」
「そうだな。俺らと共に為信の兵が御所へ押し入る。途中から好きに蔵を暴いてもいい。嬉しいことずくめだ。」
虚しいことに、野郎どもの話声の中へ顕村の叫びはかき消されてしまう。
ただし唯一、非情な運命が待ち受けることだけはわかった。