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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第六章 浪岡御所陥落 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日朝
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終末 第一話


 北畠(きたばたけ)(あき)(むら)は商家長谷川の者らや賭け場仲間を助けた。それも己だけの一存で。確かに顕村は浪岡の御所号という立場であるし、つまりは一番偉い人物である。だがその考え甘く、学は人以上に積んであるのだろうが、何も知らぬ温室育ちでしかない。



 当人にとっては仲間を助けたことは善きことであって、民の出自はどこか身分はどうであるかで差別しない私はたいそう素晴らしいと考えている。純粋にそう思っている。だからこそ亡き(あき)(のり)が彼らを摘発したことは、賭け場を潰すというより、一種の “差別” によるものかとも考えた。下賤の者らを排除する意味で。そして賭け事自体は悪いことではなく、下々の者と寄り添う非常に良いツール、さらには一緒に混ざって遊ぶ私自身は、下々の者を積極的に理解しようとする素晴らしい人物だということにいつしか変わっていた。



 ただしそれらの意識や考えに(のっと)るならば、常に上下という分け方が存在する。その事実に顕村は気付かない。上が下に対し尽くそうという姿勢。その裏には自分は上の人間であり、他人は下という絶対条件があった。だか残念なことに自分が賭け事に(はま)っているという事実、上の者ならば本来は教え導く立場であり己の身を律するべきであるのに、このような頽落(たいらく)



 学だけはあるので、顕村にはこのようなことを考えることのできる能力があった。さらにはその力で、今の状態を正当化することもできた。飛躍した論理を美辞麗句で並び立て、今いっそう賭け事へのめりこむのである。下の穢れた遊びに興じている、上に立つ者。あくまで下の者の暮らしを学んでいるだけ。

 そしてさきほど賭け場仲間を助けた。結果として牢を開ける際に正体がバレたろうが、それでも行く。余計なものを省いて理由を言うならば、“賭け事をしたいから賭け場にいく” のである。



 ……今夜は久しぶりに開かれるだろう。(よし)(まち)を自ら誘い、商家長谷川の裏手へ向かう。


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