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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第六章 浪岡御所陥落 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日朝
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線香を挿すか置くか 第五話

 旧暦七月二日、朝。水谷(みずたに)(あき)(ただ)が話し合いを持った翌日。水谷は浪岡北畠の主要な者を連れて油川へと発った。奥瀬(おくせ)氏などそとがはま衆の動員を願うためである。


 少し空を見上げると、黒くて厚い雲が西側より漂ってくる。……これは一雨降るかもしれぬ。そうであったので水谷の一行は少し足早に羽州(うしゅう)街道(かいどう)を北へ急いだ。



 小一時間すると、浪岡の空はどす黒い雲で覆われた。いざ雨が降るかと町の者らは家へ帰るが、降りそうで降ってこない。誰もが首をかしげる。そして辺りは昼間であるのにまるで夜のような暗さだった。たまに日差しが差すこともあるのだが、すぐに(さえぎ)られてしまう。





 ……御所の北畠(きたばたけ)(あき)(むら)。彼だけは天気よりも時間ばかり気にしていた。太陽の傾きが全く分からないのは残念だが、はやる気持ちを抑えつつ時が経つのを待っていた。




……そのうち(ひつじ)の刻(午後二時ぐらい)になっただろうか。チャンスとばかりに近習(きんじゅう)らを連れて御所内にある地下牢へ向かう。何事かと戸惑う家臣らは顕村に問うと、彼はこう答えた。





「御一新だ。浪岡に住まう民に悪き者はおらぬ。」




 商家長谷川の者らや捕まった野郎どもを解き放つという。……そう、水谷ら主要な者がいなくなったタイミングを狙っていたのだ。これだけ離れてしまえば、すぐには戻ってこれぬ。もちろんほかの者らはなんとか静止しようとしたが、顕村は自らの立場を傘に来て、逆らえば処罰するぞと言わんばかりに、無理やり強行してしまった。



 ある者は急いで近くの源常館げんじょうかんに住まう顕忠の元へ走ったが、顕忠が駆け付けた時にはすでに遅い。


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