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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第六章 浪岡御所陥落 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日朝
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線香を挿すか置くか 第四話

 旧暦七月一日(現代の暦で八月中旬)。両管領のうち一人の水谷(みずたに)(とし)(ざね)、亡き長老の息子の北畠(きたばたけ)(あき)(ただ)。彼ら二人は御所内で話し合いを持った。まだ日の盛りになる前の頃合いで、風も少し吹いていたので涼しい感じがしたことだろう。




……結論はすでに決まっており、あとはその進め方だけだった。ひとまずは水谷が浪岡北畠の主要な者を連れて油川を訪問。そのうえで奥瀬(おくせ)氏ら(そと)(がはま)の兵の動員を頼み、浪岡での駐留および潜んでいる為信方の協力者の一掃を願う。



 すなわち浪岡の民が心底嫌っている滝本(たきもと)重行(しげゆき)の再登場を意味する。だが好き勝手いえる状況ではない。今ほど敵方に付け入れられそうな機会はなく、戸惑いを隠せない家中を安定させるためにはこれしかない。





 顕忠は水谷に言った。



「念のため私は浪岡に残る。」


源常館(げんじょうかん)殿、そうしてくださるとありがたい。」




 二人は至極、笑顔である。やっとのことで浪岡は落ち着くのか、それは少し経ってみないとわからない。だがせめて二人は同じ先を向いている。その事実は、少しばかりではあったが、家中に安心感をもたらしていたようだ。




「私の名代として息子の(あき)(うじ)を連れていってくれ。油川の様子を見せることは、いい勉強になろう。」


「ええ、もちろんです。」







 まさかこの時、一生の別れになることなど思いもよらぬ。水谷も、顕忠も。


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