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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第六章 浪岡御所陥落 天正六年(1578)晩夏 旧暦七月三日朝
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線香を挿すか置くか 第一話


 長老の北畠(きたばたけ)(あき)(のり)は死んだ。それも誰も叫びを聞かなかったせいで、息が完全に絶えてしまった後に気づく。


 犯人は恐らく源常館(げんじょうかん)の使用人である。事件の後、その人物のみ消え去っている。(まかな)いを調理するのがたいそううまく、いつしか屋敷の者らすべての腹を(にな)っていた。だが彼と深く親しむものはおらず、何が好きなのか、家族はどうであるとか、まったくわからなかった。……もとより下人にそこまで興味を持つ者などいないのだが。




 では、誰の指図で顕範は殺されたのか。ここ数日の間、顕範は賭け場を摘発し、そのことによって乱れていた御所の(あき)(むら)を正そうとした。だがいざ賭け場を暴いてみたところ、隠れていた野郎ども、不埒者。為信に付くべきと主張してきた者らの屋敷へ逃げてゆく。


 ならば摘発を指揮した顕範が狙われたのか。もちろん顕範を殺したところで、他の者が判断しなければ捕まった者らが解放されるわけではない。だが逃げる過程で殺された者もおり、仇を討つという意味で十分じゅうぶんありえた。



 だが一方で、顕範を恨む人物は彼らだけではない。南部方からも顕範は嫌われており、浪岡の独立独歩を唱える彼は邪魔な存在でしかなかった。つい最近追い出された南部代官の滝本(たきもと)重行(しげゆき)など大いにありえる。さらには独立独歩を危ぶむ浪岡北畠の家中という可能性もある。




 つまるところ、誰が事を起こしたのかわからない。


 誰もが疑心暗鬼に陥り、お前は味方かあいつは敵か、皆目(かいもく)見当(けんとう)がつかず。



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