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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第五章 北畠顕範暗殺 天正六年(1578)夏
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滅亡への始まり 第二話


 旧暦六月二十日。今の(こよみ)に直すと、八月の初めくらいのこと。暑苦しい青天の日だったという。四日(よっか)(まち)の商家長谷川の暖簾(のれん)前に、北畠(きたばたけ)(あき)(のり)自らが率いる兵らが集まった。五十人ぐらいだろうか、鎧をつけているわけではないが十分に物々しい雰囲気である。道行く人は野次馬を作り、今から何が起こるのかと遠目より見つめる。何も予告なく突然のことだったので、商家の者の誰もが慌てふためく。……長谷川(はせがわ)三郎(さぶろう)兵衛(ひょうえ)は何事かと思い、兵らの前へ厳かに進み出た。戸惑いの表情を浮かべながら、目の前にいる顕範へと畏まって申すのである。




「長老様……これはいかなることで。」




 顕範の顔に笑みはなく、ただただ厳しい眼光で睨みつけるのみ。すると隣に侍る格の高そうな兵が、持っていた紙を広げて三郎兵衛に対して読み上げた。それも大声で。




”長谷川三郎兵衛、(なんじ)は浪岡衆を(たぶら)かし、私利を(むさぼ)ることはなはだ(むご)し。これより(なんじ)を捕え、家屋敷すべてあらわにする”




 三郎兵衛は目を見開きたいそう驚き、顕範に対し事を申そうとした。だが一言も許されず、すぐさま縄で両手を締め付けられてしまう。身体はまったく自由が利かない。近くには槍を持った屈強そうな兵が、一応槍の先は綿の入った袋で覆われているようだが、暴れようとでもすれば激しく痛めつけられるだろう。




 顕範は残りの兵に命じて、商家長谷川の屋敷の中へと押し入りさせた。中の者は逃げるどころか何もすることができず、兵らがどんどん中へ進みゆくのを見ることしかできなかった。各々だまって縄にかかり、汗かく中どこかへ連れられていくのである。


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